ロシアルート

 駅前の広場を足を高く上げて歩く男がいる。昔のナチスの行進のようでもあり、さらにそれを滑稽にしたようでもあった。何やらブツブツ言っているので、明らかにちょっと頭のおかしい輩である。よせばいいのに会社の連中が何か言ったのか揉めはじめた。私はトラブルに巻き込まれないために完全に無視していたというのに。その後周りに人がいなくなったので、私は例の男の方に近づいて行き、パンチを食らわせようとするがよけられたので、今度は腕を使って首を締めて殺してしまった。私は傍にあったタンクの汚泥の中に男を突き落としてからバルブを開いて汚水を全部抜き、バルブを付け替えて清水で洗浄した。さてこれからどうしようかと思案して、結局列車でロシアに逃げることにした。眼下にグラースの街並みが見え、いざとなったらピストルで自ら命を絶たねばならない運命であることを悟り、つまらぬ男を殺したばっかりにこんな羽目に陥ったことを深く悲しんだ。タンクを満たした水は合成されたものだが、その合成法を完成させた博士が、その研究過程を館内放送で話し、成果が認められてロシアに招かれたことを自慢している。私は近くにあったマイクを取り、水の合成は人類にとって大きな発明だが、ロシアに行ったら大変な目にあう、ロシアを舐めたらいけないと言うが、博士は意に確認介せずこれからモスクワに技術指導に向かうという。私は電車を乗り継いで鵜ノ木駅に着く。そこから軽自動車より小さなブルドーザーを運転して工事中の道路を通って志田町に行く。昔ながらの町工場の裏手に出ると、中から死んだ伯父が出て来てそっちの離れだと言う。歩いて行くと路面が牛乳や味噌で汚れていてそれらを踏んでしまったため、離れの三和土に入るのを躊躇っていると、今度は死んだ祖父が中から顔を出して、今から片付けるから少し待ってくれと言う。なるほど私はこの離れの小屋を取り壊しに来たのである。