虫酸が走る

十一月二十八日(火)晴
長州藩士、攘夷の志士と聞いただけで虫酸が走る。倒幕に動いた長州の尊皇攘夷派をわたしは心から憎んでいる。天皇制は嫌いだし、それを悪用した明治政府はもっと嫌いだが、天皇家が嫌いというわけではない。尊皇派や狂信的な国学者は死ぬほど嫌いだが、国学ややまとことばはむしろ好きである。国家神道は憎んでも余りある思いがするが、神社の中には本当に清々しい気持ちになる場所もあるし、神祇思想はわたしの興味をそそる。これらはちょうど、サッカーのサポーターとか呼ばれるファンの輩(やから)の言動は嫌っているが、サッカーそのものを嫌っているのではないのとよく似ている。違うのは長州の場合、長州藩士も長州も、長州出身の政治家もすべて嫌いという一事だけである。長州藩士で尊皇攘夷で倒幕に参加しながら、明治になるや開明派に転向して天皇を傀儡化した連中に至っては、嫌うのも汚らわしい気がしている。