2016-01-01から1年間の記事一覧

ユメドレー

大晦日(土)晴 パリ篇 パリに来ている。路面より2メートルほど低くなった正方形の広場が市場になっていて、一目で移民とわかる服装の容貌の若い女性と私は何事かことばを交し、私は路面に戻ると自転車に乗ってパリの街を走る。丘の斜面に沿って作られた高級マ…

秘密の小部屋

十二月三十日(金) 普段着とは言えかなりワルっぽい恰好をした見かけない営業の男がO嬢と話をしていて、急に顔を近づけてから「シメは××だな」と言う。「何でわかるんですかあ?息嗅いだんですかあ?」と驚くO嬢。男は笑いながら、「この手の女子はだいたい…

三人心中未遂

十二月二十七日(火)陰後雨 海岸線から車で十分ほどのところにある瀟洒な数寄屋造りの建物の中で、四十がらみの上品な和服の女性から手渡されたのは見事な茶碗である。見込みに薄い紅色の花模様が浮かんだ、有名な「花水木」という茶碗で、茶道の教授をしてい…

三場面

十二月二十六日(月)晴 待ち合わせでやって来たのは酒井和歌子であった。初老とは言えさすがに綺麗である。私は若い頃よりお綺麗になったのではないですか?こうして二人で歩いていると同じ歳くらいに見えて、きっと夫婦だと思われますよと言う。彼女もまんざ…

事故の顛末

十二月二十五日(日)陰 午後七時過ぎ、そろそろ退社しようと思っている。いつもの蒲田のオフィスで私はコンピューターで何か作業をしていた手を休め、ふと見事な枝ぶりの枯れ木二本が工場のすみにあるのに目をとめた。今度天気のいい日に青空を背景にその写真…

情死ならぬ上司

十二月二十四日(金) 上司というものは常に部下からの批判に曝されるものではあろうが、やはり私も部下のひとりとして今の上司を九カ月見て来て、冷静に客観的に判断するとやはりダメな面ばかりが明らかになる。地方の国立大学を出て経理畑を歩んで来たという…

離れの住人

十二月十八日(日)晴 家の塀にボールをぶつけては返ってくるのをグローブでキャッチするという、子どもの頃よくやった遊びをしている。ただしボールは大きめなソフトボールである。何度か目に投げたボールがとんでもない方向に飛んだ。道路の反対側にある古い…

アニメと実写

十二月十六日(金)晴、寒し こうの史代『夕凪の街桜の国』読了。これが「広島もの」の原点であるらしい。こちらは『この世界の…』と違って、被爆した家族を直接描く。それが現代にまで続く姿を描く。ヒロインの女性たちのセリフが全部のんさんの声に聞こえて…

読後感

十二月十四日(水)雨後陰 原作漫画「この世界の片隅に」読了。素晴らしい作品の一語に尽きる。改めて、涙の浮かぶこと度々であった。映画ののんさんの声を思い出しながら読めるので、さらに胸に迫るものがある。すずさんという女性の可愛らしさは、日本人とし…

ふたりの女

十二月十三日(火)陰 トラックの荷台に車を載せる順番待ちをしている。先にベンツが入り、次は私の車の番なのだが、荷台に対して真っ直ぐの位置になかったため、切り返して位置を変えることにした。ところが、バックしたとたんブレーキが効かなくなっていくら…

健とすず

十二月十一日(日)晴 午後一で東京ステーションギャラリーに行き「高倉健展」を観る。混むと言われていたがガラすき。内容は出演映画の予告編や一場面が延々と続くだけで何の工夫もなく期待外れ。招待券を貰って行ったからいいようなものの、自分で金を払って…

後進国

十二月九日(金) 通勤時マスクを携帯するようになった。電車の中ではかなりの割合でマスクをした人がいる。これは風邪を引いているというより予防の意味合いが強いようである。確かに、通勤時の混雑した車内では、誰かが風邪を引いていたらそれが感染する可能…

乗り遅れ

十二月朔日(木) 会社の慰安旅行に出掛けるためバスで空港に向かっている。となりには過去に関係のあった女がたまたま座っている。空港に着いたところで、ふとパスポートを持って来たか不安になり、荷物を開けてみるとチケットもない。それにどの航空会社乗る…

リフォーム

十一月三十日(水)陰後晴後雨 道路の向こうに団地が何棟も聳えていて、自分の会社の人間がそれぞれ手分けして団地の各部屋のリフォームを手掛けることになった。ボランティアだという。わたしは歩くのも困難でいざりの姿で何とか道を渡り、さらに岩石だらけの…

カラ出張

十一月二十八日(月) 高架線を走って来た電車が高層ビルの五階くらいの高さのターミナルに入る。見たこともないお笑い芸人3人組がテレビ番組のレポート役として降りて説明を始める。どうやらここは滋賀県らしい。向うに山並みは見えるが湖は視界にはない。私…

井の頭線の女

十一月二十六日(土)晴 夕方吉祥寺に着いた。久しぶりだったのでサンロードを中心に歩いてみた。駅の中はずいぶん変わってしまって驚いたが、北口の街のすがた自体はそれほど変わっていないようだった。ただ、店はずいぶん変わってしまったように思う。高校や…

水の縁

十一月二十五日(金)晴、寒し 私の勤務する研究所は周囲を池に囲まれた円形の建物である。ある化粧品会社のお偉方という老人が見学に来たので私が案内してその建物に通すと、突然建物がぐるぐると回りはじめる。勝手を知っているのか老人がレバーを操作してど…

室町の香り

十一月二十三日(水)陰後雨 虚無僧研究会の第三十五回虚無僧追善供養尺八献奏会に牛込の法身寺に出掛ける。数年振りの参加だが、全般に音色が綺麗になり先日の雅楽と同じくα‐波とともに心地よく聴くことの出来る演奏が増えたように思う。特に室町期に作られた…

和のもてなし

十一月十九日(土)晴 午後台湾からの賓客を嶺庵に迎え、煎茶、聞香、抹茶の後尺八古典本曲を吹き、宴席となる。和歌山の酒「紀土」を出したら知っていた。恐るべし。写真は嶺庵の茶花である。楽しく過ごすことが出来た。

役員会

十一月十八日(金)晴 突然呼び出されて行った先が役員会議室であった。初めて入るその部屋は天井も高く装飾も豪華でヨーロッパの王宮の中にいるようである。私は末席と思われる場所に会議中にも拘らず腰を下ろすと、役員たちが睨みつける。そこは役員席で、そ…

匂い関係者

十一月十五日(火)晴 昼は私が小玉鬘と源氏名をつけた入社二年目の女性と外で食事。この子は本当に可愛くて目下私の一番のお気に入りである。今度京都に行くというので私がモデルコースを作ってあげることにする。要は娘と父親なのである。 終業後七時前に有…

雅楽と茶会

十一月十三日(日)晴 昨日土曜は三宅坂国立劇場に赴き『創造する雅楽』を聴く。芝祐靖作曲の雅楽曲「招杜羅紫苑」と「雉門松濤楽」の二曲也。六年前に初めて大阪で雅楽を聴いた時のことはこの日乘の2010.10.29の項に書いた。正直言って退屈したのである。今回…

老いの哀しみ

十一月十日(木)陰後雨 年史の資料として社内報を読み返している。当時は何気なく読み捨てていたものだが、後になって通観すると、時代を映す鏡としてきわめて貴重な資料である。ちょうど、自分が入社した頃を境に、会社も社会も大きく変わり始めたのが見てと…

傑出した駄作

十一月八日(火)陰後雨 会社の帰りに桜木町で映画を観た。先日美容院で手にしたGQという雑誌に出ていた「ぼくのおじさん」という映画で、面白そうに見えたから行ってみる気になったのだが、これがまあ、近年まれにみる駄作であった。雑誌の提灯記事にまんま…

眠りの長短

十一月七日(月)晴 朝晩の通勤の電車で座れると本を読むが、眠くなってすぐに寝てしまう。このこと自体は前からあることなのだが、以前は一駅の間のたかが四・五分の時間がものすごく長い時間寝ていたように感じられていたのに、最近は一駅過ぎた頃かなと思っ…

男性誌

十一月五日(土)晴 美学的施術と散髪に都内に出掛ける。池尻大橋から小洒落た店の並ぶ目黒川沿いを歩き恵比寿に出る。いつもの美容室でいつもの人に切って貰う。今回は白髪染をしたこともあって時間がかかり、その間目の前に置いて貰った男性誌を手に取った。…

贔屓筋

十一月三日(木)晴 天気予報に反して晴天。ワールドシリーズ、シカゴ・カブス優勝。第七戦も同点に追いつかれること二度、延長で激戦を制しての勝利である。凄い試合の一言に尽きる。日本ハムに続いて応援している方のチームが優勝したと思ったら、同じ日に早…

病弱

十一月二日(金)陰後雨 寺田寅彦の日記を読んでいる。大正四年から八年にかけて読了。大正という時代の知識人たちの生活スタイルや時代の感覚を知りたくて読んでいる。あったこと、したことを淡々と述べるスタイルなので、斷腸亭日乘などにくらべればそれ程面…

声明

十月二十九日(土)陰 国立劇場に赴き声明を聴く。一時より真言宗高野山の四箇法要。観客の年齢層が異様に高い。恐らく平均で八十歳を越えているのではないか。四十代を含む我が家などかなり若い部類である。登場から法衣や所作を含む一切に目が釘付けになる。…

無為徒食

十月二十七日(木)晴 元居た部署の営業報告会に出る。もはや自分が完全な部外者であることを痛感し、寂しさと疎外感を禁じ得ず。改めて考えれば、その部署から戦力外通告によって放り出された訳であるから、恋々として関わりを保とうとするのは惨めな話であろ…