2017-07-01から1ヶ月間の記事一覧

香りの器

七月三十日(日)陰 静嘉堂文庫に赴き「珠玉の香合香炉」展を観る。佳品多く楽しむを得る。香合は小さきもの多く、蓋し収集に最適のものならん。香を容れる実用より、飾り物・置物として愛玩の対象たりしこと歴然也。香道具の展示もあり、また曜変天目も公開さ…

寒中症

七月二十九日(土)晴後雨 わたしの場合、熱中症よりは寒中症にかかりやすい。正確に言えば寒中熱中症とでも言うべきもので、冷房の効いた部屋で集中(熱中)して読み書きをするうちに体が冷え切ってしまい、お腹をこわし寒気をおぼえる、というものだ。ひと夏に…

八犬伝

七月二十七日(木)陰 日々暇を偸盗(ぬす)んでは読み継ぐものから、はや三巻に到りぬ。話は佳境に入りて、八犬士中六人(ろくたり)までがすがたを顕(あら)わし、筋の縺(もつ)れに因果の錯綜、読み進むごとに引き寄せられ、興趣は尽きず、時間は足りず、もどかし…

文藝

七月十七日(月)晴 先週から南総里見八犬伝を読み始めた。M倶楽部で安房の国に行った縁もあり、思い立って読むことにしたのである。小学生の頃ダイジェスト版のようなものを読んだきりで、きちんと読んでいなかった。今回は岩波文庫である。先年同じ岩波文庫…

きれぎれの記憶

七月十四日(金)晴 家が二箇所に分かれていて、2 ・300メートルあるその間をしょっちゅう行き来している。一方の家には母がきれいな日本髪に結って着物を着てすまして座っている。二階の私の部屋には娘のアキノが教科書や菓子などを机の上に置きっぱなしにし…

黎明期における日本の香料産業【第三回】

七月十二日(水)晴 4. 日本の天然香料すでに述べたように、石鹸の賦香などで需要の生じた天然香料を国内で生産する動きも明治期にはありました。明治年間に製造された天然香料としては、芳樟油、桂皮油、橙皮油、纈草根(セイヨウカノコソウの根)油、菖蒲根油…

黎明期における日本の香料産業【第二回】

七月十一日(火)晴 2. 香料と関税 幕末に始まる海外との交易は日本に西洋の香水や香粧品をもたらしましたが、それはちょうど、今見てきたような合成香料の勃興期に当るわけです。石鹸や化粧品といった製品に接し、それまでの日本にはないそうした西洋の香りに…

近代と映畫

七月十日(月)晴 子安宣邦著『「近代の超克」とは何か』読了。この本を読み始めた動機である、「近代の超克」という問題についてのおおよその理解は得られた。今まで何となく知っているようなつもりでいたが、丸で分かっていなかったこともよく分かった。それ…

黎明期における日本の香料産業 【第一回】

はじめに今日一般に化粧品や香水などの香粧品、あるいはシャンプーや石鹸などのトイレタリー製品に使われる香料は、多くの香料原料が混ざり合わされた調合香料と呼ばれるものです。その調合香料の原料としての香料は、天然の植物由来の天然香料と、化学合成…

鰐の池

七月八日(土)晴 居酒屋に入ると朝からおじさんたちが酒を飲んでいた。大事な話があった気がするのだが忘れてしまい、私はハーブティーを註文する。待つ間にトイレに立つ。入ると板敷きに穴が開いているだけの原始的なトイレである。しかも穴から下を見るとそ…

君たち女の子

七月七日(金)晴 私の今の職場はやや広い会議室のような部屋の一角に仕切られた「半」個室である。半の意味は、天井までパーティションはあるものの、上部が一部明かり取りのように空いているところがあり、ガラスが嵌められているわけではないので音が筒抜け…

ほとんどの日本人

七月六日(木)晴 今、子安宣邦著『「近代の超克」とは何か』(青土社)を読んでいる。子安には『漢字論』を読んで以来注目していて、最近も『「大正」を読み直す』によって、大逆事件の意味や津田左右吉のラディカルさを教えられたり、吉野作造や河上肇の凡庸さ…

平凡の強さ

七月五日(水)晴 小熊英二著『生きて帰ってきた男』読了。平凡なひとりの男の、平凡ではない一生。シベリア抑留や結核、戦後の苦難を生きてきた著書の父親のすがたを、「もの書く種族」ではないごく普通の庶民が時代の空気をどのように感じていたかを含めて描…

真宗

七月二日(日)陰 井上鋭夫著『本願寺』読了。本願寺の坊官下間(しもつま)家のことを調べていて浄土真宗や本願寺に改めて興味を持ち、まずは概要を知ろうと思い立って読み始めたのだが、予想外に読みごたえがあった。名著と言うべきだろう。そこで、千夜千冊で…