2017-01-01から1年間の記事一覧

外堀の石垣

十二月二十八日(木)晴 昼で會社が終りになつたので午後江戸散策に出た。田町で電車を降り、慶應義塾の正門前を通つて綱坂を上る。文久三年(1863)にベアトが撮つた寫眞が殘つてゐるが、左右の景色は變はれど坂そのものは往時を偲ばせる。登り切つて正面のかん…

今年の十大出來事

十二月二十六日(火)晴 今年のわたしにとつての十大事件。 1 『南総里見八犬伝』を読み終えたこと 2 グラースでフランス語での講演をしたこと 3 徳川御三家(尾張、和歌山、水戸)の城を巡つたこと、江戸城にも行つたこと 4 河内長野觀心寺で甲斐庄正光の墓を見…

若い娘たち

十二月二十五日(月) 知っている人には今さらなのだろうが、やっと大阪・登美丘高ダンス部が踊る“バブリーダンス”をユーテューブで見た。これが実に素晴らしい。やはり若い娘たちの頑張る姿というのは、ただ頑張るだけでなくその成果の質が高いと人の心を躍ら…

拘らない

十二月二十四日(日)陰 「こだわりの×××」とか「×××にこだわった」という言い方が嫌いである。何かにこだわるということを良いことでもあるように思いなす風潮も嫌である。わたしは常々ものにこだわらずに生きたいと思っているので、人から「こだわってますね…

りり

十二月二十三日(土)晴 埼玉に家を買った。わりに広くてちょっとした庭もある。横浜にこだわらなければこんなに広い家に住めるのだと知り、もっと早くに決断すべきだったと思った。前の家を買う際に比較のために他県の物件を見ていれば、きっとこちらを選んで…

戦争調査会

十二月二十二日(金)晴 井上寿一『戦争調査会』(講談社現代新書)読了。このところ井上寿一の本を続けて読んでいる。同じ現代新書の『第一次世界大戦と日本』、メチエの『終戦後史』である。『戦前昭和の社会』も持っている。しばらくの間井上章一と混同してい…

江戸日和

十二月十八日(月)晴 竹内正浩著『重ね地圖で讀み解く大名屋敷の謎』讀了。題名は好かぬ種類の本ながら、先日珍しく麹町の書店に立ち寄つた際手にして面白さうに見えて新本をそれも現金で購つたものである。江戸末期の地圖と現在の市街圖が重ね合せて見られる…

逆櫓の段

十二月十六日(土)晴 國立劇場にて文樂公演を觀る。演目は「ひらかな盛衰記」から五段。最後は逆櫓の段なので樂しみにしてゐた。前半のお筆、後半の権四郎の人形の芝居が見事で見應へがあつた。しかし、逆櫓の段はやはりまだまだ名人の域には遥かに及ばない。…

保護貿易

十二月十二日(火)晴 コーエンとデロングによる『アメリカ経済政策入門』読了。アメリカの関税政策について知りたくて手にしたが、知りたいことは書かれていないものの面白いので読んでしまった。みすず書房らしからぬキャンベルスープ缶のアップによる赤い装…

週末もろもろ

十二月九日(土)晴 朝休日としては早く家を出で表参道まで電車で行き、徒歩伊勢半の紅ミュージアムに赴く。近代香粧品なぞらえ博覧会なる企画展を観る。明治大正期の香水瓶の展示があり、今の余の関心に近く興味深く見る。それから渋谷まで歩き井の頭線で吉祥…

還暦過ぎて

十二月六日(水)晴 『幕末京大坂歴史の旅』『還暦以後』と二冊続けて松浦玲の本を読んだ。面白かった。歴史家として信頼できるだけでなく、文章が巧いので楽しく読めるのである。私も還暦が近づいているので他人事ではないが、もちろん明るく元気な還暦過ぎの…

襲名

十二月三日(日)晴 夕方からホテルオークラに赴き、六代目竹本織太夫襲名を祝う会に出席。久しぶりに和服で行った。こういうパーティは苦手な方だが、織太夫になった咲甫太夫の友人でもあるT氏の誘いを受け、滅多にない機会ということもあり行くことにしたも…

遅い紅葉

十二月二日(土)晴 午後江戸城に赴く。昨年から公開された富士見多聞櫓を見るためである。大手門は出る人でごった返しているが入る方は空いている。百人番所、大番所の横を通って本丸方面に登る。松の廊下跡脇を通って築山を上がると多聞櫓である。靴を脱いで…

虫酸が走る

十一月二十八日(火)晴 長州藩士、攘夷の志士と聞いただけで虫酸が走る。倒幕に動いた長州の尊皇攘夷派をわたしは心から憎んでいる。天皇制は嫌いだし、それを悪用した明治政府はもっと嫌いだが、天皇家が嫌いというわけではない。尊皇派や狂信的な国学者は死…

江の島へ

十一月二十五日(日)晴 天気が良く予報よりも暖かだったこともあり、昼前に家を出で鎌倉経由江ノ電で江の島に赴く。橋を渡り参道で昼食、鰺の塩焼き、栄螺の壺焼きを食す。それから児玉神社を参拝。訪れる人は稀で、かつ工事中であったが、常々児玉源太郎と後…

娘たち

十一月二十三日(木)雨 三組の夫婦で旅行に出掛けた。自分より年配一組、だいぶ若い夫婦一組が一緒である。若い方の奥さんを私は気にしているが、その娘である3-4才の子が私になついている。パパと勘違いしてか抱きついてきて、可愛いので抱っこしている。場…

今日の夕景

十一月二十一日(火)晴

夢のかけら

十一月二十日(月)晴 久しぶりに教室に戻ると懐かしい顔がならんでいた。わたしはいつもと違う角度だと言って教壇に立ち、ふざけて教師のような振る舞いをする。前の方の同級生は面白がって笑顔で見てくれているが、後ろの方の男がやって来てちょっと来いと言…

新旧の知己

十一月十八日(土)雨 今週は水曜に、鎌倉にギャラリーを構へる有名寫眞家のJ氏と仕事の打合せの後、鎌倉で飲む機會があり、金曜は高校時代の友人で二十年以上会つてゐなかつたI氏と蒲田で飲んだ。ともに話題も豊富で深い話が多く、久しぶりに知的な興奮を覚…

神保町界隈

十一月十四日(火)雨 神田と日本橋方面に用向きがあり、晝の合ひ間に神保町まで足を伸ばした。久しぶりの古書肆街である。古本屋以外の店は變はつてしまつた處も少なくないが、古本屋は昔のままの店が多いやうである。獨特の匂ひに四十年前初めてこの街に入り…

1%の巨悪と、「平等」という観念の終焉

十一月十三日(月)陰後雨 昨日、パラダイス文書に関するテレビ番組を見た。余りの卑劣さに、政治思想の対立とか経済に起因する格差とか、南北問題といった対立や、いや地球温暖化までもが、矮小化されるというか、鼻で笑われているような屈辱と無力感を覚えた…

国家の犯罪

十一月十二日(日)晴 昨日、松下竜一著『怒りていう、逃亡には非ず』読了。平岡正明の『戦後事件ファイル』を読んで泉水博の名前とこの本の存在をはじめて知り、鈴木邦夫のブログを読んで大筋をつかんでさらに興味を持ち、アマゾン経由で古本を註文して取り寄…

ロケットと漫才

十一月十一日(土) 出張で行っていた種子島宇宙センターでロケットの発射に立ち会った。無事に飛び立った後、コントロールセンターは建物ごと水平に動き、窓の外がコンクリートの壁になった。皆で成功を喜ぶのかと思っていたら、あっという間に人がいなくなっ…

泥棒と修学旅行

十一月十日(金)晴 家のリビングで会社の元同僚らとくつろいでいると、廊下の外で物音がする。そう言えば一年前のあの音は何だったの?と客のK氏が聞くので、去年の忌々しい出来事を思い出す。私は念のため廊下に出てみると見知らぬ男が立っている。「何をし…

時間について

十一月九日(木)晴 駅から家まで歩いて帰る道に信号がふたつある。最初の信号を待つとふたつ目も必ず待つことになる。逆に、ひとつ目をギリギリのタイミングで待たずに渡り終えると、次の信号は待たずにすんなりと渡れるのだ。ふたつの信号はきっちりと正確に…

あと一歩

十一月六日(月)晴 考えてみると、今年は皆あと一歩届かなかった。清宮君の早実は西東京決勝で敗れ、中村君の広陵は甲子園の決勝で負け、マー君のヤンキースもあと一勝が取れずにワールドシリーズ進出を逃した。そしてマエケン、ダルビッシュのドジャースはそ…

終了

十一月四日(土)陰 日本シリーズが終わった。四番の差、中継ぎ・抑えの差、そして何より監督の選手起用の差が出た試合だった。キャッチャーに嶺井を使い続けた采配は訳が分からない。2点目の柳田のピッチャーゴロにしても嶺井が的確に指示していれば本塁送球…

読了

十一月三日(金)晴 二日前、やっと『南総里見八犬伝』を読了した。岩波文庫で全十冊、四カ月かかった。主に朝晩の通勤時に読んでいたが、その間通勤時間があっという間に過ぎると感ずるほどに、十二分に楽しませて貰った感がある。まず以て日本文学中の傑作で…

うるさくて眠れない

十一月二日(木)晴 朝の通勤時、始発から座って行くのを常とする。五十分近い長丁場である。まずは本を読み、途中で眠くなって眠る。たいてい十五分から二十五分くらい眠ることになるが、下車駅を乗り過ごしたことはない。この睡眠が日々のリズムを作っている…

暗寂

十月三十日(月) 眠れぬ日々が続いている。時差ボケのせいばかりではない。つらつら自分の人生を省みて無念と寂寞の思いを抱き、この先を考えて不安と焦慮に苛まれる。私はどこか暗い影のある人生を歩んで来た。性格と境遇が相俟ってそうなったことは分かって…