江戸日和

十二月十八日(月)晴
竹内正浩著『重ね地圖で讀み解く大名屋敷の謎』讀了。題名は好かぬ種類の本ながら、先日珍しく麹町の書店に立ち寄つた際手にして面白さうに見えて新本をそれも現金で購つたものである。江戸末期の地圖と現在の市街圖が重ね合せて見られるように出來てゐて、散策に良い経路に從つて解説もされてゐる。今後の江戸探訪にも役に立ちさうで、中々良い本である。また、中で述べられてゐる意見も同意することが多く、著者を信頼できる。やはり江戸城天守の再建は止めておくがいいと言ふし、三宅坂の藩邸跡地に近い公園に戰後に設置された變ちくりんな裸婦彫刻が飾られてゐるのを無粋とし、此処にこそ渡邊崋山の彫像を建てるべきと言ふのには諸手を挙げて賛成である。また四谷の上智大学の西に續く真田濠が戰後に瓦礫で埋め立てられ運動場にされてゐるのをいい加減水堀に戻すべきといふのも賛成する。そして小石川後樂園の風致を乱す東京ドウムといふ醜悪なる建造物への呪詛に似た言葉にも同意する。巨人軍の本拠地といふだけで腹立たしいが、景観を乱す事犯罪に等しい。それにしても東京には探せばまだ江戸の名残がたくさん見つかるものらしい。余も江戸の餘香を求めて散策がしたくなった。