2010-01-01から1年間の記事一覧

庚寅大晦日

終日家に在り、通信執筆。夕方書斎の片付けを為す。最近殆ど読み書きを嶺庵でしてゐるので、ご無沙汰してゐるバーにちよつと顔を出すやうなものか。尤も、そんなバーとかスナツクとか、とにかく常連になつた店などといふものを持つたためしはないのだが。大…

經行と陀羅尼

法華経譬喩品を読んでゐて佛前読經を考へる上でのヒントとなりさうな語句を見つけた。漢文で「經行」と書かれるものだが、該当する箇所の植木雅俊によるサンスクリツト語からの現代語訳では「そぞろ歩き」となつてゐる。經行(きやうぎやう)とは梵語チヤンク…

師走好日

十二月二十九日 (水)晴 洗濯、及び台所洗面所の掃除を為す。尺八練習、法華経読書、佛説大乗造像功徳経写経。佛典漢訳の漢文は禅書に比べれば分かり易いのだが、其れでも固有名詞で躓く。佛教辞典が入用な理由である。法華経は少しは面白くなつて来たが昨年…

猫兎レール

恐らく遍路の途中なのだらうが、雨の中カツパを着てわたしは歩いてゐる。ただ、金剛杖もリユツクも持たず軽装で、前日泊まつた宿に荷物を置いて来たらしく其処に戻らうとしてゐるやうだ。田舎の町の中を歩いてゐると道路にお餅を敷き延べてある。此処らの風…

尺八とピアノ、それから佛教辞典

尺八とピアノによるコンサートを、寒いので車で飯田橋トツパンホールまで聴きに往く。三時開演、終演五時過ぎ。如道会若師範神令氏とピアノは奥様三奈さん、其れにゲストの箏奏者の演奏である。尺八とピアノの合奏曲は二曲であつたが、二人をよく知る作曲家…

辟支佛

造像功徳経を読んでゐて見知らぬ言葉にぶつかつた。辟支佛といふもので、辟や支の文字を漢和で引いても出てゐない。単語でなく文として支を動詞として読まうとしても意味が通じない。ところが、法華経を読んでゐたら同じ言葉が出て来て注釈もあつた。それに…

霧海箎

午後尺八を吹く。二尺三寸管が購入以来最高の音色を出し、調子に乗つてたくさん吹く。たまにかういふことはあつて、音も大きく澄んでゐるのに息はいつもより続いて余裕をもつて吹けるのである。要するに効率よく吹けてゐるから音も出て呼吸も楽なのであらう…

終日家に在り

十二月二十四日(金) 五時起床、ストレツチ、坐禅、読経、掃除、朝食。其の後『仏説大乗造像功徳経』を読む。漢和辞典を引きながら読み進めていくのは英語やフランス語の本を読むのと変らず、理解の程度も似たやうなものであらう。午後は法華経を読み、尺八を…

仏前読経問題其の後―1

わたしが今考究してゐる此の問題に興味を示してくれたのはまだ二人しかゐないけれども、わたしの探究心はさらに強くなつてゐる。アプローチとしては、読経の歴史と仏像の成り立ちといふ二つの方向が考へられやう。読経の歴史を調べることは当然経典そのもの…

山羊鹿

田園都市線の踏切で、警官の指示で一端座りこんで電車をやり過ごした後わたしは走り始めた。しばらく走ると先に二頭の大きな動物が同じ方向に走つてゐるのが見える。最初犬だと思ひ嫌な感じがするが、一頭が立ち止まつたのを見ると鹿のからだつきに山羊の頭…

演奏会

十二月十九日(日)晴 竹友会創立九十周年記念演奏会開催。十時大隈講堂前集合。リハーサルを経て二時半開演、六時前終演して場所を椿山荘に移して懇親会。九時半に散会となり帰宅十一時過ぎ。演奏会は現役生の日頃の努力もあり上出来也。客の入りも程良く、…

漢和辞典

新刊の書店に寄る機会があり、漢和辞典を見てみた。『元亨釈書』を写す中で未知の漢字があり、手持ちの辞書を引くも載つてゐなかつたため少し大きめのものの購入を検討し始めたからである。数万円する大きなものを考へてゐたが、さうしたものは置いてをらず…

興味なし―或いは精神的鎖国について

歳をとつたからなのか、もともと偏狭な性格なのか、此の頃は興味を持つことの幅がだいぶ狭くなつてゐるやうだ。好奇心は強いのだが、向ける先が限られてゐる。世間で評判とか人気といふやうなものには大抵興味が湧かないか、むしろ嫌ふことが多い。わたしの…

音曲の日本

十二月十四日火(陰) 『元亨釈書』書写二日目。昨日とほぼ同じ生活。昨夜の分に陳思王といふ名があり、調べて見ると魏の曹操の五男で詩人としても名高い曹植のことであつた。曹植には魚山で天上からの奏楽を聴き其れをもとに梵唄を作つたといふ伝説も残り、母…

國史大系

十二月十三日(月)陰後雨 定時退社後買物して帰宅。米を磨ぎ尺八を吹く。夕食後嶺庵に籠り、昨日図書館で借りて来た虎関師錬の『元亨釈書』の巻二十九音藝志の項を書写し始む。墨を磨り和綴本に罫線を引いて筆で写し取つてゆく。國史大系本しかまともな校本…

奈良逍遥

十二月十一日(土)晴 朝七時半に宿を出で、高畑町の志賀直哉旧居の脇を通つて春日の森に分け入る。まだ寒い中摂社を巡り若宮経由で春日大社本殿に至る。神札を購ひ国宝館に赴くも開館九時の為諦め、若草山の麓を抜け手向山八幡に詣づ。宇佐八幡の大仏開眼に…

幻住庵と城南宮

十二月十日(金)晴 早朝家を発ち新幹線にて京都に向ふ。午前中京都市内にて用談を済まし、昼前車にて大津の幻住庵に赴く。松尾芭蕉かつて此の地に逗留し『幻住庵記』をしたたむ。余二十歳の頃此の書を読み、以来訪ねむことを期すも果せず。今三十年の後此の…

涅槃の後

十二月九日(木)晴 昨夜『ブッダ最後の旅』(岩波文庫/中村元訳)読了。直接の死因となるキノコを出した者への仏陀の思ひ遣りや、近くに仕へたアーナンダに対する最後の言葉には胸を打つものがあり、読み終へると同時に大きな喪失感を覚へるのはブッダの偉…

師走

十二月八日(水)晴 昨夜少し雨が降つたやうだ。朝はぐつと気温が下がり清冽な空気が頬に冷たく心地よい。最も寒い日で此れくらいの気温なら冬は好きな季節になるであらう。会社に行くと富士山は勿論丹沢にも薄すら雪が掛かつてゐる。昨夜は得意先との忘年会…

ITの人

社内で「情報セキュリティ研修」なるものがあり、出席が義務付けられてゐる為参加。情報システム部の人間が説明をするのだが、ところどころ日本語がをかしい。緊張のせゐとは思へず、堂々と読み間違へる。特に、「主たる」といふ言葉を「おもたる」と読んだ…

読経道と虎関師錬

十二月五日(日)十一時より赤坂報土寺にて父方の伯母の一周忌法要。真宗大谷派の寺だが、だうも浄土真宗の読経や作法は好きになれない。浄土三部経の阿弥陀経を誦したのだが、変な節がついて耳に馴染まない。若い副住職はへらへらして落ちつきがなく、仏の…

黒の美

十二月四日土(晴) 九時より一如庵にて尺八稽古。布袋軒三谷及び鈴慕を吹く。十時辞して駅前にて一茶の後地下鉄で青山一丁目に到る。徒歩南下する途上乃木神社横に乃木希典将軍の旧居が保存されてゐるのを知り公園に足を踏み入れる。南向きの傾斜地の四・五…

文房と仏典

十二月三日(金)雨後晴 昨夜より大雨。風も強し。朝家を出ると近くのいたち川の水位が今まで見た中で一番上つてゐて心配したが、電車に乗つてゐる間に晴れてきた。そして気温も上り暑いくらゐである。会社に着くと北西の方向に大きな虹が出てゐた。今週は外…

黒岩比佐子さん

黒岩比佐子氏の若すぎる死について、わたしのよく覗きに行くブログ数軒(ブログの数へ方がわからない)で話題になつてゐる。わたしは氏の著作は読んだことがなく、ただブログを読んでゐただけだが、最後の方は本当に痛々しくて読めなかつた。今日久しぶりに…

大学ノート

仏前読経問題を考究するため仏教思想の勉強を進めてゐる。『読経の世界』と末木文美士の『仏典を読む』、それに岩波文庫のゴンダ著『インド思想史』を併行して読んでゐる。図書館で借りた『読経の世界』は面白いので結局ネツトで古本を注文した。見えて来た…

納豆卵スープ

食事に納豆を食することが多い。安くて簡単で美味しい上に栄養があるのであるから、最高の食材であらう。中年男のひとり暮らしではとにかく簡単に出来て生ゴミを出さないことが優先されるから、勢ひ納豆を食べる機会は多くなる。わたしにとつての贅沢は、此…

仏前読経の謎

十一月二十九日(月)晴 通信読者の知人から、七十一号のわたしの疑問に答えてゐる本があると教へられて早速読んでみた。苫米地英人著『お釈迦さまの脳科学』といふ本である。此の苫米地といふ御仁、経歴や肩書きはかなり胡散臭いのであるが、平易な語り口な…

十一月二十八日(日)晴

朝から洗濯掃除買物、図書館に行き『読経の世界』を借りる。面白さうである。午後尺八練習と読書。宅急便にて色紙掛が届く。嶺庵の床の間に掛軸代りに掛ける。五月に京都の冷泉家で買つた和歌を連ねた定家の書の色紙を飾る。入浴後ストレツチと夜坐。休日ら…

東大・岩崎邸・新橋

十一月二十七日(土)晴 九時より一如庵にて稽古。先日の演奏会に於ける余の演奏につき如正師より音量もあり音質も通り今後は独奏できるやう精進すべしとの言葉を戴く。坐禅等の呼吸法鍛錬の成果か、嬉しき激励也。本日より布袋軒鈴慕の稽古を始む。一如庵を…

古書目録

十一月二十五日(木)晴、夜になりて雨 神田の東陽堂より古書目録届く。三百五十余頁に及ぶ厚い目録にて仏教・宗教関連の一万六千四百五十余点の古書を掲載す。珍しければ一時間程掛けてざつと目を通す。何故突然送られて来たのか最初は思ひ当らずにゐたが、…