古書目録

十一月二十五日(木)晴、夜になりて雨
神田の東陽堂より古書目録届く。三百五十余頁に及ぶ厚い目録にて仏教・宗教関連の一万六千四百五十余点の古書を掲載す。珍しければ一時間程掛けてざつと目を通す。何故突然送られて来たのか最初は思ひ当らずにゐたが、途中で明治に出た『名士禅』といふ本を注文したことを思ひ出した。その本は三千円で左程高くはないが、目録に載る専門書は軒並み万単位であるし、とにかく似たやうな題名の専門書の多さに驚く。例えば『摩訶止観』だけとつても十八種類も研究書が出てをり、各々が六冊とか二十六巻とかあつて、専門の研究をするためにはそれを全部読まねばならないのかと思ふと気が遠くなる。しかし、特定の領域でどのやうな学術書が出てゐるのかを知るのには便利である。また、この古書店は価格が比較的高めであることも分かつて少し得した気にもなつた。『香と仏教』といふ本をわたしは藤沢の古書肆で五千円で購入したのだが、目録では八千八百円になつてゐたし、幾つか所有してゐるものも、わたしが買つた値段よりも皆高いのである。まあ、研究上必要な本をすぐに見つけたい場合はこれ程揃へてある店は少ないだらうから便利であるにしても、わたしのやうな素人は気長に古本屋を見て回つた方が安く手に入れられるといふことであらう。ところで、全部目を通して見たが、「読経」に関する研究書は見つからなかつた。『読経の世界』といふ本は今図書館に注文中だが、主題はわたしの関心と異なることは分かつてゐて、それでも何かヒントはないかと思ひ読んでみるつもりである。