2012-08-01から1ヶ月間の記事一覧

ヴイルヘルム・マイスターの修業時代より

八月三十一日(金)晴 恵まれた自由の中で、美しい高貴なものにとり囲まれ、立派なひとびとと交わりながら成長した人、ほかのことを容易に理解するために、まず知らなければならないことを先生たちから教えられた人、忘れる必要のないことだけを学んだ人、善き…

偶感

八月三十日(木)晴 歯を喰ひしばつて生きてゐる。生きるとは耐へることだと此の齢になつてやつと知る。歯を喰ひしばつて耐へる。怒らぬやう、怒気を含み棘のある言葉を発せぬやう、黙つて耐へる為には兎に角歯を喰ひしばらねばならぬ。何か氣に障ることを言は…

鎌倉往還 

八月二十九日(水)晴 昨日思ひの他仕事が捗つたので、暑さで疲れ氣味でもあり、週の半ばの今日は会社を休む事とす。午前中は書斎で執筆、通信八十二号を書き始む。早めの中食をとつてから車で家人と倶に出て鎌倉方面に向ふ。十二所の明王院と光触寺を訪ぬ。…

日欧併讀

八月二十七日(月)晴 週末明けは暑さが辛い。いつもは歩く駅から会社までを、月曜日はついバスに乗つてしまふ。仕事は多いが雑用がないので次々と片付き定時退社。尺八稽古、夕食の後讀書。『ヴイルヘルム・マイスターの修業時代』を讀み始む。森銑三著の『…

川越

八月二十六日(日)晴 九時過ぎホテルを出で関越道経由にて川越の旧市街に入る。喜多院近くの駐車場に車を停め、川越大師喜多院を参拝。江戸城より移築せし客殿や五百羅漢を面白く見る。 喜多院の庭 五百羅漢像のひとつ 尺八を吹く羅漢 携帯で話し中の羅漢(?) …

如覚庵訪問

八月二十五日(土)晴 本庄摂氏三十六度 早朝家人と車にて出発、首都高速を与野で降り、一般道を武蔵丘陵森林公園に向ふ。途中熊谷市を通り、森林公園が暑さで有名な一帯にあることを初めて知る。北口駐車場に車を停め入園。炎暑の悽まじき事東京横濱の比に…

転倒

八月二十四日(金)晴 家の各部屋には天井に丸い火災報知器が附けられてゐる。築五年に近くなつたせゐか、最近になつてそれらが電池切れを知らせる警告音を発するやうになつた。もともと匂ひはてんで駄目だが音には敏感な方であり、特に大嫌ひな電子音には過敏…

旧制一高

八月二十二日(水)晴 竹内洋著『教養主義の没落』(中公新書)讀了。大正・昭和戦前の旧制高等学校を中心とした教養主義と、戦後の新制大学における教養主義との違いや、その没落の様相や消滅の要因について大方知ることが出來た。旧制高校生や新制大学生の…

荒び

八月二十一日(火)晴 いつもは我慢出來てゐた事が幾つか続いて起こつて我慢が出來なくなり、惡い方向に気分が傾いて竟には何もかもが嫌になるといふ事が年に二三回ある。今日はそれであつた。会社での自分の境遇も我慢がならぬし、仕事も上手く行かぬ上に、憤…

普通の一日

八月二十日(月)晴 定時退社。帰路家の近くの川を渡る橋上から夕映への空を見る。雲の形と其の色調、そして夕焼の空が美しい。帰宅後尺八を吹くこと日課の如し。夕食の後九時より臨書。言はずと知れた黄庭堅である。十一時に至り止め、筆を洗ひ歯を磨いて就寝…

茶の湯と讀書

八月十九日(日)晴 一昨日『学力と階層』、今日『昭和のエートス』讀了。両書とも世上に流通するマスコミ的論調や効いた風な論説といつたものの考への足りぬ点を鋭く指摘してくれる點で痛快な本である。教育に於ける格差の存在といふ厳然たる事実、教育を市場…

茶道香道キツチン道

八月十八日(土)陰後晴 着物にて出掛ける積りなるも雨の予報なれば止み、西洋式の服装にて外出。N子の実家にて茶の湯の稽古。昼食の後田園都市線大井町線東横線と地下鉄を乗り継いで広尾に至る。既に日照り強く竟に雨には逢はず。溽暑堪へ難し。明治屋にてN…

足の話

八月十七日(金)晴 自分の體の中で最も自信のある部位は、余の場合足である。此の場合の自信とは見た目の良さや健全さ具合を言ふ。他に自慢できる程の身體的な美質を持たないが、足だけはさう悪くないのではないかと思つてゐる。何より足裏の皮膚が柔らかく…

古本新本

八月十六日(木)晴 帰途藤沢で降り有隣堂の催事場にて今日より始まる古書フエアを覗くも得るものなし。五階の常設古書コーナーに行くも同様。止む無く有隣堂の新本の売り場に行くが、文庫すらまともな品揃へなし。これなら北口のジユンク堂の方が遥かに良い。…

盆雲

八月十五日(水)晴 お盆休みとは言へ電車はそれ程空いてはゐない。いつもと変はらず出勤。午後突然ある悲しみに襲はれて外の非常階段に出て午後の空を見る。雲が多いのだが、ただもくもくと白い真夏の積乱雲といふよりはやや秋を感じさせる様々な形の、微妙な…

六十七年前

八月十四日(火)雨後晴 豊下楢彦著『昭和天皇・マツカーサー会見』讀了。帯にある通り「從來の昭和天皇像を根底から覆す」力作である。『昭和天皇独白録』や『昭和天皇の終戦史』を讀んだ後だけに、戦前・戦中・戦後を通じた昭和天皇の姿が、極めて明確に理…

酒席 

八月十二日(日)晴 午前中より來客に備へ書斎と嶺庵の掃除を為す。先日購入せしスチーム・モツプを初めて使ふに、勝手良し。四時過ぎ先日ライブハウスに同席せしK氏夫妻來庵。銘酒獺祭の吟醸酒を頂戴す。六時より飲食。ビールの後日本酒。余の用意せし黒牛…

ライブ

八月十日(金)晴 夏休み二日目。今日は夫婦とも絽の着物にて午後三時半過ぎ、少しでも暑さの和らぐを待ちて外出。表参道に出で、徒歩根津美術館向かひにあるミーレのシヨールームに赴く。N子の前職時代の知り合ひの案内にて館内を見学し、一茶を喫す。それか…

ぼんぼり祭り

八月九日(木)晴 夏休み第一日目である。午後夫婦で浴衣に着替へて電車にて鎌倉に赴く。古本屋数軒を巡り、鏑木清方美術館に入る。御成通りで一茶の後鶴岡八幡宮に到り、夕闇の迫る中ぼんぼり祭りのぼんぼりを見て歩く。流石に浴衣や和服の人多し。目当ての松…

教養と教育

八月八日(水)晴 ネツト注文を含め今日購入せし書目。 苅谷剛彦著『学力と階層』朝日文庫 苅谷剛彦著『大衆教育社会のゆくえ』中公新書 竹内洋『教養主義の没落』中公新書 このところ教育に関する内田樹先生のブログを読んでゐて同感する事や教へられる事多く…

雑感

八月七日(火)晴 最近は近現代史の本をよく讀んでゐるが、その結果分かつた事は政治家の回想録ほどあてにならぬものはないといふことだ。事実誤認といふよりは真赤な嘘、捏造が多く、それも弁明や言ひ訳の為だけでなく手柄話や自慢話も嘘八百を並べたてて恥…

碌な者ではない

八月六日(月)陰後雨後晴 戦後の進駐軍と政府や皇室とのやりとりについての詳細が、ここ二十年くらゐの間にだいぶ明らかになつて來てゐるやうだ。そして、戦後七十年近くなつて、当時誰が毅然としてゐたか、誰が狡賢く立ち廻つてゐたかも自ずと明らかになり…

書斎清涼

八月三日(金)晴 会社を休み朝から室外機を設置する裏庭の草取りを為し、処分する古いエアコンを屋根裏から出すなど一日分の汗を三十分で掻く。八時半工事人來たり、一時間程で嶺庵に新しいエアコンを設置す。序なれば嶺庵の大掃除も為す。午睡の後讀書、『宮…

雑誌

八月二日(木)晴 会社の帰りに雑誌を買つた。久しぶりの事である。週刊ダイヤモンドといふ雑誌で、東京の私鉄の躍進についての特集であることをネツトで知り讀んでみたくなつたのである。今後私鉄の地下鉄への乗入れや私鉄間、或はJRとの相互乗入れがさらに…

教養主義と歩行法

八月一日(水)晴 昨夜筒井清忠著『近衞文麿』読了。余の抱きゐたりし疑問に答ふる書にて、戦前の文麿の人気から戦後の糾弾に至る背景をほぼ理解す。文麿の依つて立つ新渡戸稲造流の教養主義が、その本質からしてマルクス主義や国家主義と言つた原理主義に反…