盆雲

八月十五日(水)晴
お盆休みとは言へ電車はそれ程空いてはゐない。いつもと変はらず出勤。午後突然ある悲しみに襲はれて外の非常階段に出て午後の空を見る。雲が多いのだが、ただもくもくと白い真夏の積乱雲といふよりはやや秋を感じさせる様々な形の、微妙な色合ひが美しい。定時で退社し、帰宅途上のいたち川沿ひからは北向きの夕映への空が見えるのだが、川面に映る分も含めて実にうつくしい空と雲の色調であつた。川際に、今年は何故か咲くのが遅く、また花も少ない百日紅の木も見える。よい事も惡い事も、空を見るにつけ色々思ひ出さずにはゐられぬ一日であらう。夏空を後どれくらゐ見られるのだらう。余はやはり夏が好きなのである。