ヴイルヘルム・マイスターの修業時代より

八月三十一日(金)晴

恵まれた自由の中で、美しい高貴なものにとり囲まれ、立派なひとびとと交わりながら成長した人、ほかのことを容易に理解するために、まず知らなければならないことを先生たちから教えられた人、忘れる必要のないことだけを学んだ人、善きことを将来容易に気楽に行えるように、またなにかの悪習からまぬかれる努力をする必要のないように、いかに行動すべきかを幼いうちに教えられた人、こういう人は、若い時の最初の力を、抵抗と迷誤のうちについやした人よりも、純粋で、完全で、幸福な人生を過ごすでしょう。

まったく軽薄な、改めることなどできない人間にかぎって、しばしばやっきになって自分をとがめたり、自分の欠点を大袈裟に告白したり後悔したりするが、そのくせきわめて強力な自然に引きさらわれてきた道から引き返す力などまるで持っていない