奈良逍遥

十二月十一日(土)晴
朝七時半に宿を出で、高畑町の志賀直哉旧居の脇を通つて春日の森に分け入る。まだ寒い中摂社を巡り若宮経由で春日大社本殿に至る。神札を購ひ国宝館に赴くも開館九時の為諦め、若草山の麓を抜け手向山八幡に詣づ。宇佐八幡の大仏開眼に際して奈良に上りし時の勧請にて、嘗ては大仏殿前の鏡ヶ池東に在つたものを鎌倉期に現在の場所に遷せしもの也といふ。直ぐ脇の三月堂は既に拝観時間になりたれば入堂。来年より三月堂を離れ仏像展示館に移る日光・月光菩薩等を観るも、既にして本来の配置とは異なれり。其の後二月堂に上り、休憩所にて暖を取る。此の時九時。其れから大仏殿に下り、大仏を拝観。更に歩きて奈良国立博物館に入る。展示品極めて興味深く、又貴重な品々に接する機会を得て感激ひとかたならず。委細は亦別の機会に書かむことを期す。昼食を館内カフェテリアに取り、ぶつぞう館に移動す。此方も圧巻にて、神仏習合関連の像を興味深く見る。此処十数年ずつと京都にばかり通ふものの、改めて奈良の魅力を知る。博物館を出て興福寺境内を抜け奈良駅まで歩き、大和路快速にて京都に戻り三時過ぎの新幹線にて帰京。東京駅から中野に向ひ六時過ぎ酒蔵第二力にて開催さる彼誰同人の忘年会に参ず。集まる者六名。盛会なるも同人各氏との興味分野のずれを感ず。抑々高校の文芸部OBを中心とし、「彼誰」といふ名の同人批評誌を刊行せし仲間にて、余は一昨年より久しぶりに参加するもの也。十時散会、帰宅十二時。