襲名

十二月三日(日)晴
夕方からホテルオークラに赴き、六代目竹本織太夫襲名を祝う会に出席。久しぶりに和服で行った。こういうパーティは苦手な方だが、織太夫になった咲甫太夫の友人でもあるT氏の誘いを受け、滅多にない機会ということもあり行くことにしたものである。会場で知人のKさんNさんに会った。
政財界および芸能・古典芸能界の著名人を発起人に揃え、織太夫の交際の幅広さを感じさせる出席者であった。市川染五郎野村萬歳、山川静夫といった有名人がスピーチをしたが、やはり師匠である咲太夫の話が一番心に沁みた。もっとも能楽関係者のお祝いの素謡はさすがに格好よく、発声という点では今のところ一番憧れるものではある。謡曲はよく物まねをして大きな声を出して家人に嫌がられるが、それは豊後節系邦楽の語りや地歌長唄端唄などとは明らかに違う声の出し方だと思う。逆に義太夫は自分では物真似すら中々難しいから観に行くのかも知れないが。
それにしても、義太夫の織太夫が広く歌舞伎や能、狂言、日本舞踊の同年代の演者と交際しているのには驚かされる。自分には芸と呼べるものはないが、立つ舞台こそ違っても異なるジャンルの人たちや同じジャンルのライバルと目される人たちと交わることも、芸の刺激ともなっていいのではないかと思う。調香師として、競合他社の調香師は敵として交際することを禁じて来た自分は、貴乃花親方的偏狭さがあったのかも知れない。