樂しい夜

四月二十一日(木)陰後雨
此の間十五日に紀尾井ホールの演奏會「竹の力」を聴き、翌日は會社の經營會議なるものに出席し、翌日曜日は如道會例會、月曜は會社同期の歓迎會と續いた。二十日の水曜は仏蘭西から研修で來てゐる若い仏蘭西人二人と晝食を倶にし、今日は神田の香料協會に出掛けて事務局長と面談の後はるばる平塚の元の職場に向かふ。六時前から食堂で余も其の對象となる歓送迎會に出席。皆に暖かく迎へられ改めて舊職場の人たちに如何に優しく接せられて來たかを知る。皆明るく樂しく、特に女性陣の優しさと若い娘たちの可愛らしさは比類がない。ちょつとしたスピーチでも皆がドツと笑つてくれるので樂しい事この上ない。何故こんな幸せな職場から追ひ出されなければならなかつたかと思ふと悲しい氣分にもなるが、とにかく懐かしくも親しい人たちとの會話に心も和む。更に調香師を中心に驛前で二次會をやるといふのでそちらにも参加。お氣に入りのRちやんの隣で、言ひたい事、思つたことを好き勝手に喋れる幸せを全身で感じた。此処暫く抑へてゐた酒量もつい増えがちであつたが、十一時に至り散會となり東海道線を皆と大船まで同道。失なつて初めて氣付く、それまでの日常だつたことの有り難さである。思はず、年史など放つぽり出して調香師に戻りたいと本氣で考へ始めそれを家内に洩らしたが、馬鹿を言ひなさんなと窘められる。