娘たち

十一月二十三日(木)雨
三組の夫婦で旅行に出掛けた。自分より年配一組、だいぶ若い夫婦一組が一緒である。若い方の奥さんを私は気にしているが、その娘である3-4才の子が私になついている。パパと勘違いしてか抱きついてきて、可愛いので抱っこしている。場所は海辺の屋根つきの広いオープンカフェである。外人客がたくさん来て、私の抱いている子をキュート、などと誉めるので、まるで本当の父親のように嬉しそうな顔をする。ところが、沖から大波が押し寄せて来て皆が流され始める。私は女の子をおんぶに変えていたが、みるみる呑みこまれそうになって避難し、海水で一杯になった部屋のドアを思い切って開けて外に出る。外はのどかな花園が広がっていて、私が女の子のことを心配していると、5-6才に見える私の息子が歩いて来る。息子に女の子と一緒にいるように言いつけたにも拘らずひとりで来たので私は怒り、「ひとりにしちゃだめじゃないか。あんな可愛い子はすぐに攫われてしまうんだぞ」と言いながら探しに行くと、一度は公園の林の中に見つけたものの、すぐに見失ってしまう。困ったと思いながら目を覚ますと、見知らぬ一軒家の二階でどうやら私は眠り込んでいたらしい。遠くで私の名を呼ぶ声が聞こえて返事をするが、そのまま音沙汰がない。階段を降りて下に行くと、夏休みなのにどこに行くでもなく手持無沙汰そうにしている中学生くらいの地味な女の子がいて、自分のあの頃と一緒だなと思う。みんなはどこかと聞くと知らないと答える。その兄らしいオタクっぽい男の子がやってくるが、イヤホンで何か聞いている。ハードディスクに直接イヤホンを接続していて、なるほどこうやればいいのかと思う。その子がパンフレットを出して、「虎屋大学」が今度「日本橋大学」に名前が変るという。私はそこの古文書講座に通っているから知っているよと答える。そうこうしているうちに兄妹のさらに下の妹らしい女の子がふたり帰って来て、そのうちひとりの11-12才くらいのほっそりとした可愛い子がパトカーに初めて乗せて貰ったと嬉しそうに話をする。私は一瞬この子が海辺で見失った子かも知れないと思う。食事の用意が出来たというので行ってみると、確かに料理が置かれてあるが、子どもたちは皆いなくなって私ひとりで食べることになり、私はうち棄てられたような淋しい気持ちになっていた。