カップル二組

六月十七日(金)晴
会社のような学校である。居るのは会社の人間が多いが机や椅子は教室そのままである。それなのに机の上には香水や化粧品の雑誌が並んでいる。黒板の前に高校二年生くらいの男女が新入社員として紹介されているが、どう見ても転校生である。女の子の方は髪を金髪に染めているが中々可愛らしい。男の子の方がモットーは「一夫一婦制」と自己紹介する。どうやらこのふたりはカップルであるらしい。その後クラス会のような形となり、前に生徒代表の三人が座っている。見ると真ん中のひとりはヤンキースの田中投手、すなわちマー君である。濃い茶色の渋い着物の上にちゃんちゃんこのようなものを着ている。顔が異様にでかい。私は階段教室というより階段そのものの最上段にいて、マー君の合図でイエーイと叫ぶ準備をしているが、階段の傾斜が急なので、叫んだ拍子に落ちるのではないかと心配している。やがてモモクロの曲に合わせてマー君がノリノリで合図をしたところ、案に反して全く盛り上がらずにすぐ下校の時間となる。グランドに沿って帰り始めると、練習をしていた野球部のボールが転がって来た。取って投げようとするが、余りにも軽くて力が入らず、とても野球部員まで届きそうもない。それに五十肩であることも思い出して、わざとゴロで返して、隣にいたN君に「最近家では硬球ばかりいじっているので軽すぎて投げられない」と弁解をする。そのまま歩いて行くと、野球部は練習試合を始めるようなのでマー君が投げるのなら見て行こうかと思ったが、中々始まらないので諦めて家に帰ることにする。川沿いに古い祠のような建物があって、入ると日露戦争の時の軍服などが飾ってある。村にひとつくらいはこうした祠に何かしら展示してあるのだと納得する。その先の食堂に入ると客のおじさんがひとりぐーぐー寝ていて、それを見ていたら私も眠ってしまう。目が覚めると自分ひとりで、尿意を催したので二階に上り、紙の箱でできた便器に放尿を始める。するとトイレだと思っていたところに店の奥さんと子供が入って来て慌てる。本当にあれが便器だったのかあやしくなって来たが、とにかくそこを出て私は男女の二人連れと三人で旅行を続けることになる。アメリカのとある都市のホテルに泊まることになり、二人が一部屋で私だけが別になるのを、二人が恋人同士だと知っているのに私は激しく嫉妬して、むしゃくしゃして歩き回る。そのうちある建物の中に入って行くとそこは会社の独身寮である。いつの間にか奥の部屋に進むと、箪笥の置かれた畳の部屋である。誰かの部屋に勝手に入ってしまって申し訳なく思うと同時に、小ざっぱりした部屋の様子に、自分の若い頃とはずいぶん変わったものだと思っている。