シネマ・銀幕・活動写真

《「間(あいだ)」の抜けた映画―エリセとアナの四十年》

映画が始まると映画の冒頭部分が映しだされ、そして、映画の最後になると映画の結末が流されていく。…なんとわかりきったことをくどく言うと思うだろうか。そうではないのだ。最初の「映画」はヴィクトル・エリセ監督による『瞳をとじて』であり、冒頭と結末…

映画の季節

突然ながら、映画の季節が到来した。 もちろん、私にとっての、である。 何を観て何を感じたかは追々綴るとして、改めて私が震撼した映画監督をあれこれ思い出してみた。そして、その中から自然に私の中のトップ10が明らかになった。 言っておくが私は熱心な…

残念

キネカ大森にて「私をくいとめて」を観た。のん(能年玲奈)は相変わらず可愛かったけれど、映画はいろいろな意味で残念な出来であった。同じ綿矢りさ原作大丸明子監督コンビでの「勝手にふるえてろ」が思いのほか面白かったので期待していただけに残念であ…

たくさん嫌い

少数であるうちはとても好きなのに、多数になると嫌いになることが多い。若くてかわいい女の子は大好きなのだが、それが大勢になるととたんに嫌になる。三人くらいなら、その中の好き嫌いがはっきりして、一番好きな娘が確定すると同時に他のふたりの個性を…

パリの調香師

『パリの調香師』という映画を観た。何とも言いようのない映画であった。 試写会の券を貰ったので京橋まで行って来たのだが、出口で関係者にどうでしたかと聞かれて、「何とも…」としか答えられなかった。元調香師として気の利いたことを言おうにも、映画と…

星の確かさ

在宅勤務が始まったころにアマゾンプライムに加入して以来、暇な時に映画を観ることが多くなった。今年130本以上を観ているが、面白い映画というのは驚くほど少ない。単なる暇つぶしになればいい方で、多くは観たことを後悔するものばかりである。その中で学…

好みの違い

朝の連続ドラマは結局見るのを止めた。二階堂ふみは良いのだが、夫役の窪田なんとかという男優の演技が見ていられないからである。福島弁も下手くそだが、とにかくオーバーアクションで台詞がまるで響かない。演じている役の人物自体も確かに共感を覚えにく…

読後

ジュリアン・バーンズ『終わりの感覚』を読み終えた。先日観た映画『ベロニカとの記憶』の原作である。ブンガクから遠ざかって久しいが、バーンズを読んだのは90年代に『フロベールの鸚鵡』と『101/2章で書かれた世界の歴史』を読んだきりで、すごい作家だと…

五月十七日(日)晴

富嶽夕景 食事 朝 チーズ入りナン。エシレバター付きバゲット。珈琲。 昼 ゴマだれ冷やし中華(豚しゃぶ、鶏肉、胡瓜、ちくわ、錦糸卵、ゆで卵、トマト入り)。シュウマイ1個。半ライス。 夕 サラダ(鶏胸肉、トマト、パセリ、玉ねぎ、ニンジン、レタス、ブ…

28年ぶり

「クーリンチェ少年殺人事件」をアマゾンで観た。1992年か93年に観ているので実に28年ぶりである。ストーリーを全く忘れていることに驚く。覚えていたのは山東が蝋燭の暗い光の中でマントウを食べていたシーンと、帰って来たハニーが小四と話をするところ、…

その後の採点

アマゾンプライムで見た映画。 「誘拐」☆☆☆ 三上博史主演。面白い。練られたストーリー。石坂浩二の首相の頼りなさだけが欠点。三吉彩花可愛い。 「悪の経典」☆★ 二階堂ふみが出ているので見ただけ。おどろおどろしさがB級で、「殺す」ことの背景が安易。 「…

日課大全

例年にない蟄居謹慎の連休である。朝七時過ぎに起きて、洗顔の後まずストレッチをする。軽めの朝食の後八時代には書斎に入り、珈琲を飲みながら読書執筆で午前中を過ごす。やや遅めの昼食は、ステーキやパスタなど一日のメインの食事としてワインを飲みなが…

すずさんふたたび

映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』を観る。3時間近い長編であり、前作『この世界の片隅に』で描き切れなかった原作の部分を加えて丁寧に作り直した作品と言えるだろう。もう少し、りんさんとすずの関係を中心にしたスピンオフ的なものになるのか…

フランスの歯磨き

このところ昨年に製作されたヨーロッパの映画を何本か映画館で観た。イタリアの寒村の無垢な青年が奇跡を起こす現代のおとぎ話のような『幸福なアザロ』、ポーランドが共産圏だった時代の歌い手の女性とピアニストの男性との、時代に翻弄された愛と芸術(音…

国宝級

私はのんさんこと能年玲奈の大ファンである。あまちゃんで出会って以来、そのピュアで透明感のある可愛さとその憑依型の演技に魅了されて来た。声も好きだし、その顔立ちがきわめて魅力的だと思うのである。いまだに、自ら監督した映画で女子高生役をやって…

サード

家内とクイーンの話をしていて、本田美奈子がブライアンに曲を作って貰ったことに話が及んだ。わたしが、生きていれば三原順子のような変なおばさんにならずに、きっと素敵な女性になっただろうと言った。若くして亡くなった芸能人にはすごい人が多かった、…

忘却症

一月五日(土)晴 午前執筆、午後散歩の後映画『トト・ザ・ヒーロー』を観る。泥の河を観たら、どうしても観たくなったのである。細部はやけに記憶に残っているのに、ラストへの展開をすっかり忘れていた。優しく健気な姉アリスのことや、彼女が事故死する場面…

泥の河

一月四日(金) 映画『泥の河』を観る。封切時に観ているから37〜38年ぶりである。わたしの中で「姉三部作」のひとつであり、まだはたちそこそこだったわたしはきっちゃんの姉銀子ちゃんに憧れたのをよく覚えている。ちなみに他の二作は『トト・ザ・ヒーロー…

今さらながら

十二月二十七日(木)晴 今さらではあるが、はじめてIMAXで映画を観た。大画面高画質、大音量高音質を誇る上映方式で、通常より500円高くなる。『ボヘミアン・ラプソディー』二回目をIMAXで観たのである。大画面は確かに迫力があり、視界はスクリーンで占めら…

フレディ

十二月二日(日)陰 映画『ボヘミアン・ラプソディ』を観た。言わずと知れたクィーンのリード・ボーカル、フレディ・マーキュリーの、クィーン結成から死に至るまでの姿を描いた映画である。いろいろな意味で、涙なしには観られない映画だった。単なる物まねで…

圧倒的完全版

六月二十三日(土)雨 シネマ・ジャック・アンド・ベティで映画『アンダーグラウンド完全版』を観る。多分96年に通常版を観て大変な衝撃を受け、自分の中の歴代ベストテン入りした映画の、6時間近くに及ぶ完全版である。ブレゴビッチの音楽が気に入って、ジプ…

志の高い映画

六月二十二日(金)晴 神保町シアターにて映画『竜馬暗殺』を観る。これもまた、長らく見損なっていた映画のひとつである。富士フイルムの白黒フィルムの広告でこの映画の一シーンを使っていたのをよく覚えている。映画も白黒で、その質感は描かれた世界にぴ…

70年代

六月十六日(土)陰後雨、寒し 神保町シアターで藤田敏八監督「赤い鳥逃げた?」を見る。「70年代の憂鬱−退廃と情熱の映画史」と題されたシリーズでの上映である。藤田敏八は秋吉久美子主演のものはじめ幾つかは見ているが、これは見逃していて初めてであった…

鷹とカトリーヌ

三月朔日(木)晴 有給休暇が余っていたのでこの日休む。どちらにしても消化しきれないが、せめてもの骨休みである。竹橋の毎日新聞社ビルで昼食の後、国立公文書館で多聞櫓文書を閲覧撮影した後、国立近代美術館工芸館に赴く。嘗ての近衛師団司令部庁舎である…

娼館

二月二十五日(日)陰時々晴 ルイス・ブニュエル監督『昼顔』を有楽町にて観る。久しぶりに触覚を刺激するヨーロッパ映画を観た感じがする。若いころからベルイマンやフェリーニ、あるいはタルコフスキーといった、国こそ違え共通する感覚を持つシネアストの映…

酒場と小津の赤

二月十七日(土) まずは昨日フィルムセンターで観た『たそがれ酒場』から。内田吐夢監督で1955年の作品。戦前戦後のことを知れば知るほど、その頃のことをもっと知りたくて当時の映画を見たくなる。戦後十年、すでに占領は終わり、朝鮮戦争の特需も終わった時…

たたかう映画

二月十六日(金) 亀井文夫著『たたかう映画』読了。「日本の悲劇」の後、「上海」と「戰ふ兵隊」を観た。その話をしたら友人が岩波新書の亀井のこの本を貸してくれ、読み始めたら面白くて一気に読み終えた。見たばかりの三本の映画の背景や作者の意図が知れて…

日本の悲劇

二月十一日(日)晴時々陰 奇しくも建国記念の日に、亀井文夫の『日本の悲劇』を観た。『敗北を抱きしめて』で触れられていたのでどうしても見たくなりDVDを購入したものだ。これは亀井が戦後になって「主として戦時中に撮影されたフィルムを利用して、日本を…

戦争責任

二月四日(日)晴 ジョン・ダワー『敗北を抱きしめて』読了。十年以上前の刊行だが、私にとってはきわめて有益で心に残る本であった。戦後の日本の姿について、これほどまで明確かつ幅広く掘り下げた類書を私は知らない。井上寿一の『終戦後史』も、これを読ん…

まとも

一月四日(木)晴 讀賣巨人軍が嫌ひである。村上春樹の小説が嫌ひである。デイズニーランドやデイズニーの作り出すものすべてが嫌ひである。ハリウツド映畫がそもそも嫌ひである。グローバリズムが嫌ひである。自民黨が嫌ひである。秋元康や三谷幸喜の作り出す…