日本の悲劇

二月十一日(日)晴時々陰
奇しくも建国記念の日に、亀井文夫の『日本の悲劇』を観た。『敗北を抱きしめて』で触れられていたのでどうしても見たくなりDVDを購入したものだ。これは亀井が戦後になって「主として戦時中に撮影されたフィルムを利用して、日本を侵略的・破壊的な戦争に導いた支配層の力を痛烈に分析」したものである。その分析はマルクス主義の教科書通りのもので、今から見ればその批判には疑問の残るものもあるが、敗戦によって騙されていたことに気づいた多くの国民には衝撃的な内容だったに違いない。そして実際に、何とGHQによって上映中止にされてしまうのである。亀井は戦時中に作製した戦争ドキュメンタリーが帝国陸軍によって上映禁止処分を受けたことがあり、GHQと帝国軍部の両方から上映禁止の処分を受けたことになる。映像の方はかなり劣悪で不完全な状態で、見にくいものであり、『敗北を抱きしめて』で言及された「天皇裕仁が、厳格な軍服姿の国家指導者から、ネクタイに上着とソフト帽という平服の、ちょっと背を丸めた文民の姿に変わっていくオーバーラップの場面」は見つけることが出来なかった。とは言え、天皇や軍部、財界や財閥上層部の戦争責任は厳しく追及され、善悪の図式は単純に過ぎる嫌いはあるが、その主張はまっすぐに伝わって来た。その主張の是非はともかく、私にとっては1946年の段階でこういう映画が作製され、それがGHQによって上映禁止にされたという事実の確認が重要であった。が、その一方で、正直に言えば、偏見や先入観がかなり強いとは言え、そこに出てくる日本の指導者たちの顔や表情の醜さに吐き気を覚えたのも事実である。そして、あのころの軍部首脳や政治家たちの醜悪さと同じものが、今の内閣にも見られることに心から絶望を感じないではいられない。苦い思いでいっぱいの「紀元節」であった。