敗者の生きざま

紅葉 3

江戸城二の丸跡の紅葉である。 江戸城がどこにあるのか知らない人、皇居が元江戸城だと思っている人が結構いる。天皇家は江戸城を間借りするにあたって、さすがに本丸は遠慮して西の丸に住居を定めた。おかけで今も本丸跡やこの二の丸には入ることができる。…

困った血筋

『闘う皇族』読了。前回取り上げた宮中某重大事件の後は、「朝融王事件」を追い、その両事件の大元である朝彦親王を振り返る内容である。朝融王事件というのは、宮中某重大事件の当事者で、何とか娘を皇太子裕仁の正室に据えることに成功した久邇宮邦彦王が…

日々の暮らし

歳をとったせいもあるが、在宅勤務とマスクの常用によって着るものに金を使う気がすっかり失せた。恰好つける必要もないし、家にいるから楽な格好でいるのが一番である。これでは女性の化粧品が売れなくなるわけである。外食もせず飲みにも行かないから小遣…

もうひとつの天皇家

浅見雅男の『もうひとつの天皇家 伏見宮』読了。『天皇と右翼・左翼』で度々言及のあった伏見宮系皇族について詳しく知りたくなって読んだものである。初期の伏見宮のことは、横井清の『室町時代の一皇族の生涯』を読んでいたので、「看聞日記」著者である貞…

悲しい現実

四年半の懲役を経てシャバに出て、いざ元いた組に戻れると思ったら、因果を含めて自分を刑務所に送り出した組長はすでに破門となっておらず、跡を襲った新しい組長に「この組にお前の戻る場所はない。旅に出るかカタギに戻るか好きにしろ」と言われた、…そん…

虚栄の市

先日、会社を辞めた若い女性とランチをする機会があった。3月に退社してすぐコロナとなり、転職活動もままならなかったらしいが、やっと就職先も決まったのでお祝いのランチである。 その時、やはり新しい職場で未知の人の中に入ることへの不安を彼女は口に…

西武終戦

今年も何かが足りなかった。去年の首位打者とホームラン王がともに不振ということもあるし、秋山の抜けたのも大きい。しかし、森脇、平良、増田ら中継ぎ以降の投手陣の踏ん張りで、去年までとは打って変わって接戦をものにしてきた。それでも勝ちきれなかっ…

嘗ての書き捨て

以下は、ずっと前に書いたままこの日乘にあげなかったものである。くだらない読み物だが一応あまりに間の空いてしまった責めを塞ぐ思いで載せる。ぼちぼち再開していきたい。ちなみに下記にある年史の校正は昨週に終えたばかりである。 枯れた、厭きた、草臥…

薫風問題

会社の社内報のタイトルを「薫風」という。良い名前だと思う。それの英語版が出ていて、そのことを社史で取り上げたところ、スペルが違うのではないかと、何かにつけ細かい役員から指摘を受けた。わたしは「Kumpu」としたのだが、実際は「Kunpu」だそうで、…

さらに…

状況はさらに悪くなっている。図書館の話である。神奈川県立図書館もネット予約での本の受け取りが出来なくなり、国会図書館で唯一残ったサービスである文献の遠隔複写郵送サービスも昨日を最後に使えなくなった。あらゆる図書館が門戸を閉ざしたのである。…

時代小説嫌い

宮地正人著『歴史のなかの新選組』読了。時代小説の手垢にまみれた新選組を歴史学の中にきちんと位置づける試みである。わたし自身、時代小説や時代劇、映画などによって捏造された新選組像に影響されてか、逆にこの集団の歴史的意味を軽視する傾向があり、…

土佐勤皇党

安岡章太郎『流離譚』読了。とても良いものを読んだという感覚がある。安岡の作品は長らく読んだことがなかったが、万国博覧会関係への興味から『大世紀末サーカス』を読んでみると面白かったので、続けて『鏡川』を読んだらまあまあの佳作という感じだった…

岩倉の企み

久保正明『明治国家形成と華族』(吉川弘文館、2015)を読んでいる。副本として岩波日本近代思想体系の『天皇と華族』を参考にしながら、明治初期の華族制度成立の過程を理解しつつある。近代天皇制を確立していく中で、ある意味必然とも思われる華族制度で…

御陵衛士

御陵衛士と言えば、通常は新選組を脱した伊東甲子太郎が慶應三年三月に結成した組織のことを言う。泉涌寺にある孝明天皇の陵墓後月輪東山陵を守る衛士というのは建前で、新選組と対抗して勤王討幕の政治活動を行ったとされるが、十一月の油小路事件で伊東ら…

或る海軍大佐の生涯

大正9年(1920)7月16日、広島県江田島にある大日本帝国海軍兵学校では第48期の卒業式が行われていた。難関の入学試験を突破して江田島に学ぶこと3年、卒業証書を手渡された後、「生徒用の軍装から真新しい純白の海軍少尉候補生服に着替えて祝宴に臨む[1]」エ…

甲斐荘正光の生涯

たまたま生まれあわせた時代が悪かったばっかりに貧乏くじをひいて、苦労や不運が絶えない上に、病気になってあっけなく若死にしてしまう人がいる。幕末に四千石の旗本当主となった甲斐荘帯刀正光の場合がまさにそれであり、史料から読みとれるその生涯の足…

すずさんふたたび

映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』を観る。3時間近い長編であり、前作『この世界の片隅に』で描き切れなかった原作の部分を加えて丁寧に作り直した作品と言えるだろう。もう少し、りんさんとすずの関係を中心にしたスピンオフ的なものになるのか…

異邦人と敗者

歴史を読む中で、権力者の振る舞いや政治史よりどうしても敗者や虐げられた人々に目が行き、民衆史や生活史のほうに興味を持ちがちなのは、わたしが取りも直さず敗者であるからに他ならない。今年は数えで六十になったわけだが、この六十年を振り返って、確…

幕臣能吏の明治維新

田中正弘著『幕末維新期の社会変革と群像』(吉川弘文館、2008)に収められた、「維新変革と旧幕臣の対応」という論文を読んだ。幕臣であった宮本久平と小一父子の幕末から明治にかけての動向を追ったもので、維新による幕臣の転身の多様さの中でもめずらし…