さらに…

 状況はさらに悪くなっている。図書館の話である。神奈川県立図書館もネット予約での本の受け取りが出来なくなり、国会図書館で唯一残ったサービスである文献の遠隔複写郵送サービスも昨日を最後に使えなくなった。あらゆる図書館が門戸を閉ざしたのである。国会図書館のデジタルコレクションを閲覧することしか出来なくなったのである。あとひとつ、県立ではネット予約して自宅に郵送して貰えるサービスは残っている。もちろん、郵送費を自腹で払って送ってもらうわけで、今回これを利用することにした。岩波文庫の『明六雑誌』上中下三巻のうち下巻を架蔵していなかったのだが、下巻を参照する必要が生じた。普段なら当然予約して図書館に取りに行けばことたりるのだが、今となっては買うしか手がないのでネットで探してみた。ところがアマゾンの中古でみても、何故か下巻だけは四千円近くもする。しかも新刊本は品切れである。古本に四千円は馬鹿馬鹿しいので、郵送料を払ってでも借りることにしたのである。

 世間では感染拡大のニュースばかりで大変なことになっている中で、何を呑気なことをと言うなかれ。自粛せよ、という命令だか懇願だかわからぬ日本語に関係なく、家でじっとしているのを得意にしている私のような人間は、この状況下で旅行に出掛ける何処かの国の首相夫人より、よほど世の中に迷惑を掛けていない存在ではないだろうか。ところでその首相とかいう人、さすがに世間からもやることなすことすべての行動において想像力に欠けているという非難が出ているが、それを聞いて私はなるほどと膝を打った。私は今までずっとこの首相を心から馬鹿な人間だと思ってきたが、私が馬鹿と思う人の最大の特徴が、まさに想像力の欠如した人であることに思い至ったのである。

 それはともかく、自由に本が借りられず文献が参照できない辛さは、わりと多くの人が感じていることではないかと思う。ただ、それで食えなくなるとか、失業するといった人も少ないだろうから、それを大声で叫ぶことが憚られているだけなのだろう。しかし、どんなことであれ、陥った不如意を伝えることは出来るしすべきだと思う。その発言が賛同を得れば、世の中を動かすことも不可能ではないはずだ。私としては何としても、国会図書館のデジタルコレクションの館内限定のものを緊急事態宣言中だけでもいいから開放して貰いたいと思っている。とは言え、このブログの閲覧数の驚くべき少なさからすれば、世間を動かすことなど全くできないであろうこともまたよく分かっていることなのではあるが。