十五の夏

十一月朔日(木)
先日佐藤優氏の話を聞く機会があって、面白いことを話す凄い人だと思って何冊か本を読んだ。やはり面白いので「十五の夏」も読む気になった。最近なるべく本を買わないようにしているので図書館の予約をしようと思ったら、横浜市内の18の図書館で所有しているのに予約待ちが132人もいるという、とんでもないことになっている。それでは埒が開かないので買って読み始めたが、かなり面白い。まだ上巻の真ん中くらいまでだが、いい旅をしていると思う。佐藤氏はわたしよりひとつ年上だからほぼ同年代である。1975年、氏が十五の夏休みの東欧・ロシア旅行記といった読み物だが、世代が近い分感情移入が出来るし、その体験は羨ましいとさえ思う。その年の夏、自分は中学3年だったわけだが、何をしていたのだろう。高校受験を控えて予備校のようなものに行っていたに違いないのだが、よく覚えていない。中学時代というのは自分の暗黒史の中でもとりわけ真っ暗な時代だから、閉塞感と屈辱感で鬱々と受験勉強をするか、たぶん三島や太宰、荷風あたりを読んでいたのではないかと思う。40年以上前のことだからずいぶん遠いことのようにも思えるが、記憶は薄いけれどそんなに昔のことではないような感じもある。翌年高校に入って最初の夏のことも、あまりよく覚えていない。少なくとも、佐藤少年のようなその後の人生を決定づけるような体験をしなかったことだけは確かだ。何を読んでいたのだろう。読んだものや感じたことを克明に記したノートをつけていたが、最初の離婚の時すべて裁断して捨てたので見返すことも出来ない。それにしても、この本に載せられた佐藤少年の旅行中の写真はなかなか素敵である。東欧の少女たちは美しいし、佐藤君もなかなか美少年である。高1であれだけ英語で意思疎通が出来るとは驚きだが、浦和高校の生徒でありその後の外務省での活躍を思えば、語学に長けた人なのだろう。1975年に自分がもし佐藤少年と同じような体験をしていたら、今ごろ自分はどうなっていただろう。そう思いながら読み進むから余計に興味深いのである。