ついに…

 思い返せば、2月27日を最後にその後は予定のキャンセルに次ぐキャンセルで、一ヶ月後に在宅勤務がはじまり、今のところ五月中までのすべての予定がキャンセルとなった。飲み会も香席も経営会議も出張も、新入社員研修もくずし字の勉強会も何もかもである。読書に勤しみ、執筆に努めるには絶好の機会ではあるが、状況はそうとばかりも言っていられなくなった。ついに、横浜市の図書館が、貸し出しサービスも中止することにしたのである。

 開架式書架や閲覧室の閉鎖はすでに始まっていて、それは仕方ないと思っていた。それでもネットで予約して受け取りに行けば借りることが出来たのだが、今度はそれも中止するというのである。これには参った。今書いているのは広範な学術書や参考書を必要とするものなので、場合によっては自分で買うしかなくなるのだが、本の性質上値段の高いものが多いのである。いや、買える本はまだいいのだが、史料やもはや手に入らない特殊な本も必要となるのに、国会図書館公文書館も開いていないのである。国会図書館のデジタルコレクションはネットで見られるが、館内でしか見られない限定公開のコンテンツが多すぎる。アメリカでは一部著作権の侵害の可能性のあることを認識しつつ、緊急性からNational Emergency Libraryというものを急遽開設した団体があって、とにかく広範な書物のデジタルデータを公開している。これにならって国会図書館も、緊急事態であることに鑑み、特例措置として著作権上確認の取れていないものでも、すでにデジタルデータとなっているものについては、この緊急事態宣言中だけでも制限を外すべきではないだろうか。おそらく、わたしのようなアマチュアだけでなく、プロの書き手や研究者も、現在の状況で相当に困っていることと思う。病気の蔓延を防ぐことは大切だが、ネットで出来ることの間口を最大に広げることで、少しでも「平常」に近い姿に出来ることがあるのであれば、やるべきではないだろうか。まあ、ネットの動画しか見ていない人たちには響かないかも知れないが、図書館を使えないことが死活問題になる人もいるのである。国会図書館の英断を期待したい。