京大式

 カードの作成を始めた。もちろん、クレジットカードでもタロットカードでもなく、B6のいわゆる京大式のカードに読んだ本から得た知識やアイデア、関連する事がらなどをメモしていくのである。学生時代に鏡の研究をしている際や、最初の著作を書いていた時分には使っていたのだが、いつの間にか廃していた。後者の頃の大部分はある時点で捨ててしまったようだが、鏡の方と、後期に次の著作として準備していた「死臭論」のためのものは残っていた。死臭論は人類学、民俗学、哲学、文学、心理学などの分野から、死と匂いの関係について論じようとした壮大な計画であったが、結局頓挫した。勉強が追いつかず、結局人体の匂いについての著作の中に死体の匂いについての記述を入れたに留まった。それはともかく、今見ても、カードで集めた情報や知見は面白く、鏡も死臭もいつかまとめたいと思わせるものがあった。

 今回始めたのはもちろん高山大人の影響で、大人の著作からの引用とそこから広がるアイデアなどを書き込むことから始めた。そうすると不思議と連想や編集力がはたらくのか、次から次へと関係するカードが出来ていくのである。デジタルの軍門に下って久しく、アナログのこうした実力を忘れかけていただけに、なんだか嬉しくなってカード作りに励んでいる。記憶の保存がカード型になると、思考は主にカード間のリレーションの発見に専念できるのかも知れない。