真・善・美

美術学校

パリにあるÉcole Nationale Supérieure des Beaux-Arts、すなわち国立高等美術学校、日本の芸大のようなものである。美術を学ぶのであればその場所も美しくあらねばならないという、至極まっとうな理念のもと建てられたと思われる実に立派な建物である。ただ…

美術二館

パナソニック汐留美術館にて「香りの器」展を観る。招待券を貰ったので赴いたものである。香水瓶、香道具など美しい展示がなされていた。その後新橋から銀座に出て、途中伊東屋で買い物をした後其の儘京橋、日本橋へと歩き、三越前から地下鉄で清澄白河へ。…

寛容について

TASCマンスリーという雑誌に、国際基督教大学の森本あんりという人(教授)が寛容さに関する記事を寄せていたのを読んだ。その中で同性愛者は地獄に落ちると書いたラグビー選手がオーストラリア代表から外されたことについて、こうした措置をとったそのラグ…

人工知能の向かうところ

西垣通著『AI原論』(講談社選書メチエ)を読み終えた。何気なくAIについて知りたいと思って手にした本であったが、内容は予想を良い意味で大きく裏切り、AIを軸にしながらも西洋哲学史を総覧したような、実に充実した読書となった。西垣通という人の考え方…

たくさん嫌い

少数であるうちはとても好きなのに、多数になると嫌いになることが多い。若くてかわいい女の子は大好きなのだが、それが大勢になるととたんに嫌になる。三人くらいなら、その中の好き嫌いがはっきりして、一番好きな娘が確定すると同時に他のふたりの個性を…

紅白雑感

今年の大晦日は大好きなベビーメタルが出るというので久しぶりに紅白歌合戦を見た。といっても最初から見たのではなく、出番の少し前から音を消してテレビをつけていた。司会が、大好きな二階堂ふみと大嫌いな大泉洋の、その間に好きでも嫌いでもなく単に興…

裸顔(らがん)

昨夜は今年唯一の忘年会であった。麻布十番の店で、三十になったばかりのバツ1の若く美しい女性Sさん、彼女よりひとつふたつ上で現在妊娠中のAさんと私の計三人の密会である。何故か三人は気が合って、いつも楽しい飲み会になるのだが、この日はまたべつの…

似て非なるものの好き嫌い

顔や名前や雰囲気や芸風が似ているのに、一方は好きで他方は嫌いということがよくある。一方がすごく好きだから、微妙に違う他方が嫌いになることもあれば、もともとそれぞれ好き・嫌いだったのだが、改めて考えてみると似ていることもある。人それぞれの好…

Rの快楽

イタリア語のRの発音が好きである。いわゆる、巻き舌のアールで、昔バイクのコマーシャルでソフィア・ローレンが「ラッタッター、ラッタッター、ラッタッター」と声に出すものがあって、何とも言えずその音の響きがとても好きだった。真似をしてよく自分でも…

大きなことば

そのことばの意味や概念、あるいは文化によるコノテーションの違いや思想史的な位置などに興味を持って読んだり調べたりしていくうちに、その拡がりの奥深さにたじろいで探究を断念してしまうことがしばしばある。わたしにとっては「鏡」や「自然」、そして…

バロック

年末年始にやむを得ず何度か日本酒を飲む機会があったのだが、やはりいけない。頭は痛くなるし本は読めなくなるし、何より翌日以降精神状態が沈滞して覇気がなくなる。やはり飲まずにおこうと思う。ワインならそんなことはなく、かつ日本酒より明らかに旨い。…

學魔降臨

先日高山宏大人(うし)の謦咳に接する機会があり、大いに刺激を受けた。その博識ぶりはよく知られていようが、そのとどまるところを知らぬ博覧強記の引用と脱線に次ぐ脱線の語り口には、長いこと大学の教員として学生を惹きつけてきた熟達の技があり、時に傲…

音楽といふもの

トッパンホールで開かれた神令尺八演奏会に行く。曲目は根笹派調・下り葉、越後三谷、布袋軒鈴慕、琴古流鹿之遠音、諸井誠作曲対話五題。最後の二曲は、それぞれ青木鈴慕、藤原道山との連管。破綻のない綺麗な音色である。プロの演奏と言ってしまえばその通…

国宝級

私はのんさんこと能年玲奈の大ファンである。あまちゃんで出会って以来、そのピュアで透明感のある可愛さとその憑依型の演技に魅了されて来た。声も好きだし、その顔立ちがきわめて魅力的だと思うのである。いまだに、自ら監督した映画で女子高生役をやって…

タイプ

七月二十七日(金)陰時々晴、涼し 亀戸の花王ミュージアムに行った。96年のaubeの広告ポスターが展示されているのを見て、突如そのモデルである高橋里奈が当時メチャメチャわたしのタイプであったことを思い出した。美形でかつ色気があり可愛げもある、ボディ…

秘密の花園

四月二十一日(土)晴 三菱一号館美術館にて「ルドン−秘密の花園」展を観る。黒の時代の木炭画やエッチング、それからドムシー家の装飾は2011年パリのグランパレでのルドン展で観ているので久しぶりの再会ということになる。初期の画集に収められたエッチング…

鷹とカトリーヌ

三月朔日(木)晴 有給休暇が余っていたのでこの日休む。どちらにしても消化しきれないが、せめてもの骨休みである。竹橋の毎日新聞社ビルで昼食の後、国立公文書館で多聞櫓文書を閲覧撮影した後、国立近代美術館工芸館に赴く。嘗ての近衛師団司令部庁舎である…

北斎

十月六日(金)雨 あべのハルカス美術館にて北斎展を観る。開催初日である。このところテレビジョン等で北斎が何かと騒がれていて、それらをたまたま目にした結果今まで知らずにいた北斎の凄さに気づかされた口なので偉そうなことは言えないが、確かに凄い。多…

予報外れ

十月九日(日)陰後晴 木曜の夜から年史の調査と美学会出席のため京都に来ている。出る時の予報では土日雨とのことであったが、結局持参した傘を開くこともなく過ごせた。今日は学会の発表を聞く合間の時間で今月一日より公開となった三井家下鴨別邸と樂美術館…

横櫛再会

十月二日(日)陰時々晴 九時過ぎ車にて出發、一路甲府に向かふ。晝前山梨縣立美術館に到着。レストランにて晝食の後『煌めく名作たち』展を觀る。京都國立近代美術館所蔵作品を中心にした展覽會である。好みの問題もあらうが、總じて日本畫の方に優品が多かつ…

美術館

九月四日(日)晴 昨日の疲れもあって遅く起き、十時近くになって地下鉄でラズパイユのマルシェに出掛ける。ここはBIO、すなわち有機野菜などの専門朝市ということもあって、家内が最も楽しみにしていたもののひとつである。野菜や果物、パンなどをどっさり買…

職場レク

一月二十三日(木)晴 六時半より茅ヶ崎にて職場の新年會を兼ねたレクリエーシヨンあり。此の手の催しに久しぶりに参加す。総勢五十名に近し。籤運悪くお氣に入りの娘たちの傍には座れざるも、周囲の同僚との談笑に時を忘る。普段仕事で少しもリーシップを発…

盛り沢山

五月十二日(土)晴 九時半家を出で横浜高島屋にて岳母への母の日の贈り物を購ひ併せて余の鞄も求む。横浜より上野に往き新装成つた上野公園の木陰にて持参の弁当をN子と食す。晴天なれど風もあり日蔭はやや寒き程也。其れから東京国立博物館にてボストン美術…

赤子とバツハ

五月三日(木)雨 午前中執筆。昼過ぎN子の友人A氏夫妻が生後二か月余りの赤ん坊を連れて来訪。昼食を倶にす。赤子は男の子にて、眠ったりミルクを飲んだり目を見開いてゐたりと何をしてゐても可愛く見飽きず。A氏夫妻よりは結婚祝ひとして南部鉄瓶を頂戴す…

ルドンと松風

二月四日(土)陰 午後N子と家を出で、丸の内の三菱一号館美術館に赴き「ルドンとその周辺―夢見る世紀末」を見る。岐阜県美術館所蔵のものが殆どで、リトグラフなどはよく知るものが多かつたものの未見の作品も幾つかあり、また予想より展示品の数が多くてそ…

其一とパソコン

十一月十一日(金)雨 昨夜無線LANの設定と先日買つたPCのセツトアツプを終へる。古い方のPCを書斎に移し、すでに移設済のプリンターと併せ、飄眇亭での原稿打込み体制が確立した。これで毛筆は嶺庵、万年筆とPCは飄眇亭といふやうに、執筆の棲み分け…

ショパンと空海

七月三十日(土)雨後晴後夜になりて雷雨 午後家を出で上野の東京文化会館にイングリット・フジコ・ヘミングのピアノ・リサイタルを聴きに往く。昔フジコの軌跡を追つた番組をテレビで見て興味を持ち、CDも持つている。春先にチケットぴあの抽選で当たつて…

テレビ三昧

七月十三日(水)晴 早朝家を出で新幹線にて京都に行く。出張にて得意先三軒を巡り、夕刻大阪南森町のホテルに投宿。今日は営業の諸氏は皆忙しく夕飯に付き合ふ者もなく、已む無く独りで過ごす夜となる。とは言へひとりで飲みに行く気にはなれず、ホテル近くの…

大空のサムライ

昨夜十一時三十二分、坂井三郎著『大空のサムライ』読了。伝説的なゼロ戦の撃墜王の生ひ立ちから入隊、訓練そして戦場での戦ひまでを綴る自伝的な作品で、わたしは松岡正剛の「千夜千冊」で其の存在を知り、先日偶々新刊書店で見つけて読み出したら止まらず…

悪魔の誘惑

ひとつ分かつたことがある。わたしが八斎戒で夕飯抜きでも比較的平気でゐられるのは、要するに家にテレビがないおかげだといふことである。一昨日は六斎日に当り、わたしは堺町御池に近い安宿に泊まつた。寒いこともあつて夜はずつと部屋に居てテレビをつけ…