Rの快楽

 イタリア語のRの発音が好きである。いわゆる、巻き舌のアールで、昔バイクのコマーシャルでソフィア・ローレンが「ラッタッター、ラッタッター、ラッタッター」と声に出すものがあって、何とも言えずその音の響きがとても好きだった。真似をしてよく自分でも口に出していたものだ、というより、今でも時々それをする。大学時代ほんの少しイタリア語を齧ったことがあって、イタリア語のRが巻き舌であることを知り、嬉しくなってやたらRの発音をしていた。ローマ、とかラファエルロとかやるわけである。こちとら江戸っ子なので巻き舌は得意なのである。もっとも、フランス語のRの発音も実はかなり得意な方で、新しい香水の評価をする職場のグループで、香水のフランス語名でRが入っていると、私が率先して正しい発音で名を呼ぶので、その都度笑いが起こったほどである。とは言え、「ラッタッター」をそのフランス語のRでやると、まるで元気が出ずに萎れてしまう。ここはやはり、ソフィアばりの明るく楽しいイタリア語のRでなくてはならないわけで、今でもあのコマーシャルは傑作のひとつだと思うのである。そのイタリアが今、コロナで大変なことになっていると思うと心が痛む。そのコロナはCoronavirusだから、Rが入っている。ここはコロロロロローッナビィルスと叫んで、病魔退散のまじないとしたいところである。