テレビ三昧

七月十三日(水)晴
早朝家を出で新幹線にて京都に行く。出張にて得意先三軒を巡り、夕刻大阪南森町のホテルに投宿。今日は営業の諸氏は皆忙しく夕飯に付き合ふ者もなく、已む無く独りで過ごす夜となる。とは言へひとりで飲みに行く気にはなれず、ホテル近くのすき家で夕食を済ました他は、ずつと部屋でテレビを見続ける。
丁度阪神巨人戦の実況があり、大阪では終了まで放送することもあつて終りまで見た。投手戦のクロスゲームで、内野手の良いプレーが随所に見られた締まつたいい試合であつた。最後は阪神のサヨナラ勝ちとなつたことも気分のいいものであつた。家にテレビのないわたしはまるで球場に試合を見に行つたやうな満足感を得た。
其の後もずつとテレビを見続けて十一時に寝た。久しぶりにテレビを見たので何もかもが新鮮である。特にCMは初めて見るものばかりで、乾いたスポンジに水が染みこむやうに記憶に残る。感じた事を幾つか列挙する。
まず、馬鹿みたいに踊るCMがやたらに多い。振りをつければいいといふものでもないだらう。子どもや「フツー」の人が乱れ踊り、しかも珍妙な振り付けで真面目に踊らされてゐるのは滑稽以外の何ものでもない。ダンスはそんなに格好いいですか。広告に人を惹きつけるアイデアがないからダンスで誤魔化してゐませんかと言ひたくなる。踊る人たちは本人は楽しいのだらうが、見る方は余ほど格好よくないと苦痛なのではないか。
ラウンド・ワンのCMは実に楽しさうだ。いろいろな遊びを楽しさうに遊んでゐて、女の子と一緒に行つたら本当に楽しいだらうなと思はせる。羨ましい。
フアブリーズのCMの主婦が坂井真紀から西田尚美に変つてゐた。何か顔違ふなと思つてよく見たら西田尚美だつたのである。昔から好きな女優だつたので嬉しい。調べてみると西田になつたのは二年前からださうで、二年半前からテレビのない暮らしになつたわたしが見てゐないのも当然なのであつた。
女優と言へばわたしの好きな肘井美佳が出てゐるCMも発見。洞窟のやうなバーで酒を飲んで「好きになつちやふかも」と言ふやつで、肘井はフアニー・フエイスの類だと思ふが、可愛くてしかもそこら辺に居さうな普通の女の子を演じられる点では西田尚美と共通してゐるかも知れない。もつとも西田の方は、もう女の子と呼べる年齢ではなくなつてゐるが、かつて出演した映画ではあの普通さが魅力なのであつた。
AKBがあんなにCMに出てゐるのも知らなかつた。おにやんこクラブにしても、モー娘にしても、女の子が沢山ゐることに恐れをなす質なので興味を持つたこともなく、好みの子もゐないが、ただ板野友美の顔は妙に苛つく。アヒル口が嫌ひといふこともあるが、見てゐて嫌な気持ちになる。昔工藤静香に感じたのと似た、「嫌な感じ」である。アヒル口は男も嫌ひで、福山雅治など世間では人気であるが、わたしは締まらない感じがしてどこがいいのかさつぱり分からない。
唇はたらこに限るといふ訳で、後の時間に出て来た石原さとみはますます美しくなつて見てゐるだけでドキドキする。特に、石原の横顔は日本の女優の中では断トツに美しいと思ふ。メリハリが効いて、顔のパーツがそれぞれ大ぶりなのに均整が取れてゐる。稀有な美しさである。