フレディ

十二月二日(日)陰
映画『ボヘミアン・ラプソディ』を観た。言わずと知れたクィーンのリード・ボーカル、フレディ・マーキュリーの、クィーン結成から死に至るまでの姿を描いた映画である。いろいろな意味で、涙なしには観られない映画だった。単なる物まねではなく、フレディを蘇らせようとした主演のラミ・マレックと監督らスタッフの熱意と努力は痛いほど分かる。似ているということよりも、それをフレディとして観ることを可能にするだけの、映画としてのクオリティを備えていた。フレディの心の襞に隠れた孤独や悲しみは、理解するなど僭越に言えるものではなく、ただ思いみることしか出来ないにせよ、その曲と歌に心揺り動かされたことへの感謝と賞賛のことばを贈りたいと思う。まさに伝説であり、クィーンと同時代に生きられたこと、リアルタイムでその存在を知っていられたことを誇りに思う。映画の中のフレディも、フレディらしくて格好いいし魅力的なのだが、最後に本物の映像が流れて、本人の方が顔立ちも姿かたちも遥かに素敵で、特に長い腕の格好良さを思い出したら泣けてきた。あの声質、あの声量、一気にマックスの音量に持って行くときの迫力が聴く者へ与える喜悦はちょっと比類のないものであった。あらためて、稀代のスーパースター、圧倒的なパフォーマーだったことを痛感し、エイズに斃れたフレディへの追悼の思いを強くする。映画として素晴らしいだけでなく、フレディの偉大さを今一度世界中の人々に思い出させてくれたことに、感謝の思いしかない。70年代から80年代を生きた人は、自分たちの若かった時代にこんなすごい音楽とアーティストが存在したことを思い出すことで、あの頃も満更ではなかったという思いを強くし、フレディを追憶して万感の思いを抱くに違いない。