28年ぶり

「クーリンチェ少年殺人事件」をアマゾンで観た。1992年か93年に観ているので実に28年ぶりである。ストーリーを全く忘れていることに驚く。覚えていたのは山東が蝋燭の暗い光の中でマントウを食べていたシーンと、帰って来たハニーが小四と話をするところ、それから小猫王が歌うところくらいである。「小公園」の提灯の並んだ安っぽい店の感じが戦後の日本を思い出させ、少年たちの傷つきやすさとどうにもならない衝動に、何とも言えぬ郷愁を感じていた28年前とは、当然のことながら感想に違いはあるのだろうが、長尺のすばらしい映像世界を耽溺したという印象は変わらない。一本の映画全体に貫く文体やトーンといったものが自分の波長に合えば、ストーリーは忘れ去ったとしても、ごく微細な一コマが記憶に残り、いつまでも「良い映画を観た」という満足感は消えないのである。台湾に対する特別な思いとともに、本当に心の奥底に何かを残してくれる名画である。もちろん、星は☆☆☆☆である。