匂い関係者

十一月十五日(火)晴
昼は私が小玉鬘と源氏名をつけた入社二年目の女性と外で食事。この子は本当に可愛くて目下私の一番のお気に入りである。今度京都に行くというので私がモデルコースを作ってあげることにする。要は娘と父親なのである。
終業後七時前に有楽町の某店に赴く。私が勝手に匂い懇談会と名づけている異業種同業含めた飲み会である。私は久しぶりの参加で、毎回新しい人たちと出会えて色々話が出来るので、行くまでは億劫に感じながらも、行くと結構楽しい。今日も電気制御系の会社のTさんと初めてお会いし、その日本酒に対する知識と情熱に驚くとともに、色々な事を教えて貰って面白い時間を過ごせた。酒蔵八百カ所くらい訪ねて千五百種類以上の酒を飲んで来たという。仕事が絡むとは言え、好きでなくては出来ない話である。ワインのテロワールのように、日本酒も米の田ごとの違いでも味は異なるという。また、夜に田の水の温度が下がらないと旨くならないそうだ。植物はストレスで音を出すので、それをセンサーでキャッチする技術はすでに開発されているという。ただ、コストが掛かりすぎるので実用化されていないのだという。この他実に興味深い話の数々であった。
お薦めの銘柄を教えて貰ったのだが、その中で今まで知らずにいた酒の名は、「睡龍」「鍋島」「暮春」「車坂」などである。是非飲んでみたいものである。会場の店はビールが主で日本酒は置いていないのだが、有楽町新橋近辺で日本酒の種類をたくさん置いているバーまで教えて貰った。そうした情報だけでなく、官能と機器による数値化の相互補完など、単なる「機械屋」ではなく、ちゃんとわかっていて議論の噛み合うところなど、実に大した人だと思う。少なくとも、会社にはここで私が議論した内容を理解してくれる人はほとんどいないと思う。大満足で十時過ぎ先に辞して帰途に就く。