ユメドレー

晦日(土)晴
パリ篇
パリに来ている。路面より2メートルほど低くなった正方形の広場が市場になっていて、一目で移民とわかる服装の容貌の若い女性と私は何事かことばを交し、私は路面に戻ると自転車に乗ってパリの街を走る。丘の斜面に沿って作られた高級マンションらしいコンクリートの建物が見える。私のいる位置からだと一回下ってからずっと上に続く通路があるので、下りの勢いを利用して一気に建物の一番上に駆け登る。斜面をコンクリートで覆われてはいるが、窓や住居らしきものは見えず、丘の中に作られているらしい。富裕層が住んでいるとのことだが、最近政府が建て増したために資産価値が下がったと不平が出ているらしい。丘の上の広場は名所になっているのか観光客が多い。大半は韓国人で、反日の目をしてこちらを見ている。地味な東洋人とぶつかったので日本語で謝ったら向こうも日本語で返し、隣では日本人女性がオプショナルツアーの申込みのために日本語で携帯電話を使っている。少数派の日本人は韓国人の敵視の中に孤立している格好である。やがて警官や警備員が出て来たので続いて誰か要人か有名人でも出て来るのかと注目している。

軽井沢篇
何かものを届けに車で軽井沢に向かっている。酒は飲んでいないのに、何度かハンドル操作を誤り、ぶつかりそうになりながら、やばいと思って目を瞑ると何とかなるということが二三度あった後何とか辿り着いた先は、会社のN女史の別荘である。黒い四角の眼鏡を掛けた53歳になるN女史の妹が、そのまますぐに帰京する私を労おうとマッサージしてくれることになった。腹ばいになった私の腰や背中を、私の上に乗らずに揉もうとするのだが、力が入らずに結局馬乗りになってマッサージを始める。そこに彼女の旦那とN女史の旦那、さらに姉妹の父親らしい三人の男性が返って来て私が挨拶をすると、三人は「わたしたちです」とだけ名乗るので、何とも気まずい雰囲気である。

合宿篇
彼誰の合宿をしている。各自PCに向かって文章を打ちながら、議論をしたり雑談を続ける。私は見た夢を文章化していて、かつ、見た夢を覚えていようと思いながら寝ると、よく似た夢を見ることによって夢が上書きされてしまう場合や、元の夢は忘れて最後の夢だけが残される場合があることなどを考察している。周りにいるメンバーは彼誰同人の他如道会の人たちや会社の連中も混じっている。従ってたまに尺八も吹き、会社の女性調香師である中山は袴姿であるにも拘らず同僚の岡島とお喋りばかりしていて一向に尺八を吹かないでいるのを私は苦々しく思っている。一方で、誰かが尺八を吹き始めて、それが実に良い音色なので見ると、私の二尺一寸管だったので、今度またそれを吹いてみようという気になる。休憩時間となって別室に行くと、父が幼い孫娘のために宿題の教材を取り出して自分で組み立て始める。私は、こんなことをしていたから姪が勉強できないまま成長してしまったのだなと納得する。ところで、同じ部屋には二十代の、きれいな在日韓国人の女性がいて、それがどうやら私の妻であるらしい。私は名前も思い出せないので、何とかごまかしながら夫婦であることを確認するように抱き寄せると、もちろん抵抗することもなく嬉しそうに身を任せる。私は急に愛しくなって、君はことし幾つになるんだっけと聞くと、二十八歳だと言う。私は、それならまだ子どもを産んでもいいのではないか、子どもを作ろうという。段々、今回の合宿の目的は子作りにあったように思えて来たのである。ところが彼女は病気の手術をしたため子どもの産めない体になったことを済まなそうに告げる。もちろん、そんなことは知っていた筈だし、だからこそこんな老いぼれと結婚する気になったのだということを思い出して、私は彼女が不憫でならなくなる。