睡気

二月二十七日(月)
今朝二時前に一度目が覚め、一条天皇の身になつて道長や伊周、隆家、定子、彰子、行成、実資、大江匡衡、安部清明紫式部清少納言和泉式部のことを考へてゐたら、興奮して眠れなくなつてしまつた。国文学者的といふか、王朝文化を雅で華やかなものとして憧れを以て見るのではなく、一人の人間、一人の天皇として何を感じて生きたのかを想像し始めると、当時の事を知れば知るほど胸が苦しいやうな思ひに捕はれてくる。そして、ユルスナールの『ハドリアヌス帝の回想』に倣つて『一条帝の回想』を書いたら面白いだらうと思ひ始める。さうなると全く眠れなくなり、一度書斎に行つて構想をメモ書きして再び寝台に入るも依然目は冴えたままである。四時半頃やつとうとうとしたやうだが、すぐに目覚ましで起こされ、結果今日は一日睡魔との闘ひであつた。