白痴

十一月三十日(土)天晴
家人と倶に鎌倉に往き川喜多映畫記念館にて黒澤明監督『白痴』を見る。ドストエフスキー原作の同名小説の映畫化である。二時間四十六分といふ大作なるも映像に弛緩なく緊張感の張りつめたまま終る。驚くべき傑作也。原節子の美しさは言ふまでもないが、森雅之の寂しげで無垢な役を演ずる力量は並大抵ではない。三船敏郎志村喬も素晴らしいが、今囘今まで余り評価してゐなかつた久我美子の演技力には瞠目した。気位の高いお嬢さんの内面を目の表情で余す処なく演じてゐる。
同じく來場してゐたM氏と晝食を倶にし、骨董屋古書肆を見た後小町通りにて袂を別つ。家人と余は鏑木清方美術館を見た後歸宅。夜はリビングに置く美術書用の本棚をネツトで捜すことに費やす。此の日再び喉痛み、風邪の兆候あり。葛根湯を服用して早めに寝ることとす。