尺八曼荼羅

十一月三日(水)晴朝晩寒し
午前中洗濯掃除など為し、尺八練習を二時間程行ふ。午後三時過ぎ家を出で電車にて神楽坂に往く。電車の中で偶々若いカツプルの拉麺を話題にするを耳に挟み、余としては珍しく拉麺を食したく神楽坂界隈を往来するもこのやうな時に限つて見つからず。時間も迫りたれば諦めて牛込箪笥区民ホールに赴く。五時半集合にて、舞台設営を手伝ひ坐禅衣に着替へる。七時より如道会演奏会「尺八曼荼羅」開催す。余は一曲目の「虚空」を其の他大勢と倶に吹奏。大方は別教室にて練習せる女性陣にて普段余は息継ぎをせぬ処でも区切るので、テンポが狂ひがちであつたが音はまずまず出てゐたので好しとしやう。楽屋に下がり着替へてから前半途中より客席にて聴く。中で如覚の一朝軒阿字観は音色も良く出色であつた。聞けば如道師遺愛の二尺管を借用せしものといふから、尺八が良かつたせゐもあらうが、しみじみと心を遠くに持つて行かれるやうな演奏であつた。惜しむらくは照明が、舞台客席とももつと暗くして舞台上にスポツト一本真上からの光にて演者を闇の中に浮かび上がらせるやうな演出であつたなら、尚一層の情趣を添へたであらうと思へた事である。九時過ぎ終演となり、舞台の片付けを為した後余は遠方なれば打上げの会も失礼して直ちに帰宅す。尚此の日の演目を下記に記す。

  1. 普大寺「虚空」
  2. 根笹派「調・下り葉」
  3. 布袋軒「三谷」
  4. 越後明暗寺「三谷」
  5. 琴古流「鹿之遠音」
  6. 布袋軒「鈴慕」
  7. 一朝軒「阿字観」
  8. 瀧源寺「瀧落」
  9. 根笹派「通り・門付け・鉢返し」
  10. 神如道生曲「無住心曲」