金曜日

十一月十二日(金)晴
やつと金曜。今週は月曜日の午前中に、人に仕事を頼んだ際「今週中でいいですか?」と聞かれ、「それは無理だろうから、来週中でいいよ」と答えて怪訝さうな顔をされた。わたしは其の日が金曜だと勘違ひしてゐたのである。皆の失笑を買ふ羽目になつたが、さういふことはあると言つてくれる者もあつた。いずれにせよ、さうして一週間が始まつたのであるから、「やつと」なのである。
昨夜、文机が届く。ネツトの古物商から買ひ求めたもので、昭和初期の物らしい。特別上等なものではなく、寸法が嶺庵の隙間にぴつたりだつたのと値段が安く、実際に見て部屋に合はなければ返品もきくといふので注文したものだ。ダンボール巻きにされた梱包は開けるのに時間が掛かつた。去年客用の簡易ベツドを同じくネツトで買つた際に、カツターを使つて慌てて開梱してゐたら本体を切つてしまつたことがあるので、今回は慎重に開梱した。ほぼ同時に届いたホツトマツトも開梱して其の上に文机を置いたが、こちらは失敗であつた。寸法が丁度良くて選んだのだが、見た目が何とも安つぽくて嶺庵に似合はず、塩ビの匂ひが強い上に大して暖かくもなく、更に寸法が余りにぴつたりだつたので電気コードの出つ張りが畳の縁に掛るのである。取り敢へず其の儘にしてあるが、いずれ特注の畳にするか、段通か何か別のものを探すことになるだらう。文机の方は置いた当初は邪魔といふか違和感があつたが、隣の本棚の上半分をクローゼツトに押し込み周りがすつきりすると大分馴染んで見えるやうになつた。本棚の移動は大成功で、部屋に腰から上の物がなくなることで嶺庵そのものが広くなつたやうな印象がある。本棚の下半分は飾り棚として残し、布を掛けて其の上に「遊行」を置いた。壁が白いので松の葉の緑がくつきりと浮かんで綺麗である。其れに伴ひクローゼツトの和服を二階に移したり、本棚の本を書斎に運ぶなど十時半まで掛り、其の後文机で読書。此の先もつと寒くなるとだうなるか分からないが、今のところ快適である。嶺庵がだいぶ「かたち」に成りかけて来たのとは対照的に、飄眇亭は嶺庵から運んだ本が積み重なつて雑然としてしまつた。来週末に文庫本を入れる本棚が届くのでそれを二階に設置して飄眇亭の文庫本のうち小説の類を全部其処に移し、空いた所に元嶺庵の本を入れる予定だが、嶺庵の本は仏教系と古典、哲学系が主でわりと大きめな本が多いので書斎の書棚全体の入れ替へが必要になるだらうと思ふ。それを勤労感謝の祝日までの連休にやるつもりである。