両極端

此の寒い時期、朝の通勤で歩く足もつい早くなりがちである。駅から会社までの約一キロ半の道のりを毎日歩いてゐるが、今朝終に新記録を達成した。電車が遅れていつもより一本後の電車だったので急いだのは事実だが、駅改札から会社正門まで十二分で着いてしまつた。信号のタイミングも良かつたが自分でも驚きである。
此の数週間は、駅から歩き始めて会社の人間をどんどん追ひ抜いて誰よりも早く歩いてゐる。寒いのでどんなに早足になつても汗をかくことはないし、体が温まつて気分爽快になるから大股で臀部まで使つて歩くのである。ところが、同じ道のりを夏場だと皆に抜かれて誰よりも時間をかけてゆつくりと歩くことになる。汗はもちろん出てゐるが、早く歩いて其れ以上に暑い思ひをしたくないからで、下手すると二十五分くらゐかかつてしまふ。信号が変はりさうになつても決して走らないから、タイミング次第でとんでもなく時間がかかるのである。
此れから寒さが緩むにつれ、わたしの歩く速度も次第にゆつくりとしたものになるだらう。季節変動といふ訳だが、我ながら極端から極端に行き来するものだと半ば呆れもするのである。