ブラック・アウト

半休して二時過ぎ家に戻り、読書を続けるうち五時過ぎに停電。自宅で初めての夜の停電である。まだ薄ら明るいうちは窓から入る光を頼りに譜面を見て尺八を吹きまくる。それも難しくなつてリビングに移動して初めて石油ストーブも電気がないとつかないことに気づく。思つた以上にサバイバル・モードである。懐中電灯とキヤンドルひとつを頼りに湯を沸かし茶漬けを食べる。残りの湯で珈琲を淹れ、キヤンドルの揺らめく炎を眺めながらラジオを聞く。流石にニユースを聞く気にならず、他にすることもないからNHK高校講座の保健体育でスポーツの歴史を聞き、次の音楽で即興演奏の例としてビル・エヴアンスやコレルリ、それにインドの音楽を聴く。普段経験することのない時間の過ごし方だ。多分聴取率はとても高いのではないかと思ふ。七時半過ぎ、冷えてきたので電気のあるうちに残り湯を温めておいた湯船で足湯に浸かつてゐるところで電気がついた。三時間弱だつたが、停電だとひとりでゐるのは確かに淋しくつまらない思ひである。終夜停電が続くやうなら独り者で何人か集まつて過ごした方がいいかも知れない。