これから来る災厄

三月二十六日土曜、晴。風強く寒し。杉花粉に苦しめられる一日也。十時より一如庵にて久しぶりに尺八稽古。最初の週末が如道忌だつたこともあるが、考へてみると三月初めてである。根笹派虚空に入る。早稲田通りの古本屋を巡り、医者に寄つて花粉症の薬を出して貰ひ買つて帰る。
それにしても福島の人たちは大変な災難である。地震津波原発事故、風評被害。農産物だけでなく、原発に近い地域は物理的な被害がなくても人が集まらずに操業できない製造業も多いといふ。そして、この先世界中で「フクシマ」の名は、チエルノブイリやスリーマイル、或いは「ヒロシマ」と並んで、数限りなく言及されることになる。福島県出身者や、苗字が福島の人たちにとつて、其れは恐らく更なる災厄といふべきものであらう。福島といふ漢字の意味するところが幸福な島であるといふ皮肉に、海外のジャーナリストもいずれ気がついて其れを書くことだらう。懐かしい故郷の名が手垢に塗れてゆくのをじつと見守らねばならない苦しみと悲しさが、彼らを待つてゐるのである。