ハリウツド・スター

断酒九ヵ月半後に酒を呑み始めて最初に思つた事は、酒に弱くなつたといふことである。もとより強い方ではないが、前回の断酒三年の後の方が少なくとも今回よりはすんなりと飲酒の生活に戻れたやうな気がする。今回はすぐに酔ふ。特に独りで飲むとすぐに酩酊する。心が弱つてゐるせゐであらう。
今日も午後買物に出て、帰りに缶ビール一本買つて帰り、其れを飲んだだけなのにいい気分である。雨が時折降つたものの、寒くはない薄曇りの空の下、適度に強い風が吹いて新緑がさざめく午後を歩いてゐる時から、何となく予感はあつた。家のそばで隣家の若夫婦と擦違つて挨拶をし、幸せさうな二人を見て独り身の寂しさを一瞬身に染みる思ひであつたが、風が其れも吹き飛ばしてくれた。家に戻り、ビル・ヱヴアンスのジヤズを聴きながらビールを飲み始めると、途端に何だか楽しいやうな、何もかもどうでもいいやうな気分になる。アルコールは偉大である。
わたしは生まれつき好き嫌ひが激しい。特に「人」の好き嫌ひがはつきりしてゐて、ほぼ人見知りのやうな感じである。其の上見た目の印象に左右されやすく、一度思ひ込むと容易に其れを変へられない。他人が「誰々は嫌ひ」と言ふのを聞くのも余り好きではないので、わたしもなるべく言はないやうにしてゐるが、今日は酔つた勢ひで言つてしまはう。まずはハリウツド・スター篇である。
自分でも意外なのだが、わたしはジヨン・トラボルタが好きなのである。特に中年以降が好きで、人を殺しても罪悪感のかけらもない役どころが特に好きである。それに引き換へジヨージ・クルーニーは今ひとつ好きになれない。比べることもないのだが、ケビン・コスナーは好きだが、メル・ギブソンは微妙にむかつく。マツト・デーモンは好きだが、レオナルド・デカプリオは何となくきもい。ジユリア・ロバーツは許せるがキヤメロン・デイアスは劣化が激しすぎる。そんなところか。駄弁も甚だしいが、酔払ひなのだから勘弁戴きたい。