コニヤツクとアルマニヤツク

八月二十三日(火)晴
定時過ぎ退社し品川に向ふ。七時より異臭懇談会。いつものメムバーに今日はT香料の方一人加はる。S社のTさんが四十年もののコニヤツクとアルマニヤツクを持つて来てくれ、其の香りと味はひの違ひを賞味。わたしは昔からアルマニヤツクを好んで来たが、比べて飲んだことはなく、産地と蒸留と樽の違ひがこれ程の差を生むとは驚きであると同時に、自分の好みを再確認できて楽しいひと時であつた。要するに二度蒸留するコニヤツクは洗練され上品で女性的な風味となるのに対し、男性的とも評されることの多いアルマニヤツクは一度の蒸留でカツトする部分が少ないので雑味を併せ含んだ厚みがあるといふことなのである。「ワイルド」と表現した人も居たが、アメリカ大陸的なワイルドといふよりは、極度の洗練を敢て嫌ふ反骨精神のやうなものをわたしは感じる。高級ブランドのもと如何にも高さうなボトルに入つたコニヤツクに比べ、地味で無骨なボトルに入れられることの多いのも好きな理由かも知れぬ。とは言へ五十度を越える酒であるから、大して飲んだつもりはなくても帰りは大分酩酊して来た。十一時半過ぎ帰宅、直ちに就寝。