挨拶

八月二十八日(日)大安。晴、残暑甚だし
昼過ぎ家を出で、着物を持参して町田のN子の実家に往く。初めてN子の両親並びに叔父叔母に会ふ。過分な歓待を受け恐縮す。快く了承を得る。茶室で一服の後、余とN子は一度茶道具を買ひに町田駅に行き、宝永堂といふ大きな茶道具屋に入る。岳母は裏千家の茶道を教へてゐるので余も入門することになつたのである。店に並ぶ品々はとても買へる値段ではないが良いものが揃つてゐてN子と二人で見歩いて楽しむ。宝永堂本店の下の階には茶道具の他に宝石類もあり、此れも何かの縁と思ひ急遽指輪を購ふことにす。サイズを合せ内径に彫金するので一ヶ月程掛るといふ。
再び実家に戻り、出入りの呉服屋に直しと洗ひを依頼するため着丈を測つて着物を預ける。其の後夕食、酒を酌み交はす。気さくで飾らぬ家風は余にも馴染みやすく、心地よく過ごす事を得る。N子の婚期が遅れたこともあり、家族の喜び一方ならぬものを感ず。余も三度目の失敗はせぬことを期す而己。途中テレビで百メートル決勝でのボルトの失格シーンを偶々目撃す。十一時過ぎ帰宅。記念すべき一日也。