動物の夢

十月二十四日(月)陰
夢の中によくライオンが出てくる。街に突然現れることもあれば、檻の戸が開いたままの場所にたまたま入り込んでしまふこともある。先日は、川沿ひの土手の上を馬に乗つて走つてゐると、地面に何かの死体のやうなものがあり見るとそれはライオンで、しかも生きてゐた。何気ないふりをしてすぐ先の橋を渡つて走ると今度は目の前を行くライオンの後ろ姿が見える。速度を弛めて脇にある小山の上に登る。何故か高いところなら安全かも知れないと思つたのである。怖さはいつも感じる。こんなことがあつていいのかといふ思ひを抱きつつ、とにかく遠ざかることを考へるのだが、行く先々で新たなライオンに出くはすといふ、映画のやうな展開である。昔はそれが犬だつたやうな気がする。ドーベルマンとかああいふ獰猛さうな犬が追ひかけて来る。玄関から家に逃げ込みドアを閉めやうとすると足がにゆつと入つて来て閉められないといふ怖い夢だ。これらに比べると現実では余り怖い目に遭はずに済んでゐるのは幸ひである。
自分でも驚くのだが、動物の出てくる夢が多い。自分が鳥になつてゐる夢さへ見る。飛ぶ夢はよく見る。鳥でないときのわたしの飛び方は主に平泳ぎだが、垂直方向に急上昇するときは念力といふか、思ふだけで何処までも高いところへ行ける。鳥瞰図の視角で行つたこともない外国の町並みを眺めることも多い。高い塔の上から石畳の美しい夕暮れの町並みを眺めてゐると渡り鳥の気分になつて来るから不思議である。あまり余計なことは考へず、翼を休め位置を確認し、今にもまた飛び出したい気分を抑へてじつとしてゐる。