呻吟

十月二十五日(火)陰時々晴 殆ど暑し
定時退社。帰宅後尺八練習。夕食の後執筆。頼まれて原稿を書くのは久しぶりで、匂ひや香りに関する論考から無遠ざかつてゐたこともあり、思つてゐた以上に筆が進まない。しかも必要な資料が見つからない。離婚後は執筆や講演など一切断つてゐた時期があり、それもあつてか暫く何の依頼も来なくなつてゐたから、もう香りについて書くこともないだらうと思ひ、それまで机の傍の書棚の一箇所に纏めてあつた匂ひ・嗅覚関連の本を少しづつ移動させてしまつたせゐである。それが、依頼といふのは来始めると続くもので、いくつかセミナーや勉強会で話をすることになり、その後の研究の進展に追いつかうと買つたままにしてあつた本など読み始めてゐるが、嘗て自分が考へてゐたことにさへ追ひついてゐない。さうかうするうち締切は迫り、家は片付かず、ごちやごちやとした家の中で、書斎とリビングのPCとの間を行つたり来たりするうちすぐ寝る時間になつてしまふ。まあ、勉強を怠つてゐた自分が悪いのであるから仕方がない。今できる最大限の努力をして書き上げるより他はない。好き勝手を書ける日乘や通信とは訳が違ふのである。