ピアニスト松原松葉

十二月十二日(月)晴
わたしの初めてのピアノリサイタルを新聞社のホールで開くことになった。何故かわたしはその録画録音を見てゐて、最初は危なっかしくところどころテンポが緩むことはあるがまあまあだなと思ふ。手の速いところも信じられないやうな見事さでこなしてゐる。其の後わたしはトークで、こんな技法もあるのですがと言つて腕をクロスさせた弾き方をしたり、有名ピアニストの物真似などすると其れがことごとく大受けで気を良くする。新聞社の記者が好意的な批評を書いてくれ、そのゲラを見せてくれたので尚気分が良い。その時自分のピアニストとしての名前が松原松葉であることを知る。何とか、この先もピアニストとしてやつて行けるかなといふ気分のまま目覚める、といふ夢である。
起きて此の夢のことを妻に話すと、昨日の夜よつぽど気分が良かつたんでせう、単純ねと言はれる。確かに其の通りなのだが、何故ピアニストなのかが分からない。だいいち、松原松葉とは何に由来するのであらうか。まあ、中々良い名前のやうな気はしてゐるが。