余の一日

六月七日
朝は六時四十五分に起きる。まず寝室の窓を開けて空気を入れ換へ用をたしてから着替を持つて洗面所に行く。顔を洗ひコンタクトレンズを着け、日によつては髭を整へてから、スクワツトと腹筋を使つた呼吸法をやつて裸になり体重を量る。数値をN子に伝へ記録してもらふ。それからシヤワーを浴びて浴室を出るのが七時十五分過ぎ。髪をドライヤーでざつと乾かしてから、バナナとヨーグルト、豆乳、黒胡麻黄粉をジユーサーで絞つたスペシアルドリンクを飲む。冬は珈琲か生姜入紅茶であつた。次に歯を磨き髪をセツトしてから寝室に戻り、服を着替へる。そして鞄に朝食のお握りを入れ、財布、携帯電話、定期などの所持品を整へてから玄関を出るのが七時四十五分前後。歩いて駅に着くのが七時五十五分少し前。早く出ると七時五十三分の電車に乗れるが、これだと大船で一旦ドア閉めがあつてすぐに降りなくてはならないので大抵は八時発の電車まで待つ。こちらに乗ると大船に着いても座つたまま大方の降車客が去るまで待ち、空いたエスカレーターで人とぶつかることもなくスムーズにコンコースに出られる訳である。コンコースでもベンチに座つて八時十一分の伊東行が着く頃にプラツトフオームに降り、混雑する此の電車を見送つて次の電車の乗車口の一番前に立つ。すでに読み始めてゐた本を読むうち次の十七分発の電車がやつて來る。運が良ければすぐに座れるが、大抵は次の藤沢まで立ち、そこで人がたくさん降りるので座るといふのがほぼ毎日の有様である。平塚まで二十分もかからぬ道中ひたすら本を読む。平塚に着いてもすぐには降りない。暫く停車してゐるので、発車のベルが鳴るまで読書を続け、その後にフオームに出るとすでに混雑はなくすいすいとエスカレーターを抜け改札を出る。駅から会社まで二十分弱歩き、職場に入つてまずコンピユーターを起動する間に持参のお握りでさつと朝食を済ませ、丁度九時の始業のチヤイムが鳴る頃に珈琲を取りに行く。淹れ立ての珈琲を啜りながらメールや依頼書の状況をチエツクして一日の仕事が始まる。
昼は社員食堂のある四階に降りて行き同僚のN氏と大体はプロ野球かメジヤーリーグの話をしながら食べる。西武中村のホームランの事とかダルビツシユの投球内容といつた他愛もない話である。それから職場の七階に上り、再び珈琲を取つて自席に戻る。昼休みはブログを打ち込んだり本を読んで過ごし、十二時四十分頃から自席で座つたまま昼寝をする。十五分睡眠といふもので、確かに三十分以上寝てしまふより、寝覚めの覚醒感が強い。午後も仕事を続けて今は五時半の定時に至ると直ちに退社。再び駅まで歩き、電車は座つて大船に到り、最近はなるべく其処から家まで三十分強をかけて運動がてら歩く。家に着くと着替へて嶺庵に移り、八時まで一時間半近く尺八の練習。気が乗らなかつたり音がよく出ない時は早めに切り上げる。八時には夕食をとる。酒は飲まない。其の後の時間はジムに行く日以外は書斎で本を読んだりブログを更新したり、執筆や書道の稽古に費やす。風呂は冬場を除けば余程疲れてゐない限り夜には入らない。夜入つても結局朝入るからである。そして十一時半までには眠るやうにしてゐる。かうした平凡な日々であるが、週末は竹や茶や香、美術館、知人との会食等で忙しく、また楽しい事も多く、平日がストレスも少なく穏やかに過ぎるのは悪くないどころか有難い事だと思つてゐる。難を言へばもう少し読書の時間が取れればとも思ふが、今の生活ですら食事や洗濯始め家事万端に関する家内の献身的なサポートがあつてこその話であり、此れ以上贅沢を言へる立場でないことは流石の余も理解してゐるつもりである。