細川日記

六月十二日(火)雨
『細川日記』上巻読了。近衞文麿と木戸幸一高松宮の間に入つて、軍人や政治家、外交官、ジヤーナリスト等と連絡を取り合ひながら、東條内閣打倒の画策に奔走する、若き日の細川護貞の苦闘の日々。天皇の発言や宮家の動きなど、当時の状況が意外なほどよく分かり興趣が尽きない。それにしても陸軍の愚劣、海軍の無責任、木戸の頑迷な小心さにほとほと呆れる。東條は殆ど狂人であらうが、そんな人間をいつまでも首相の座に置き続けた木戸と昭和天皇の責任は重い。昭和十九年七月やつとその東條内閣が倒れる処で上巻終了。下巻はいよいよ終戦に向けた重い日々が続く。