世捨て人

六月十三日(水)陰、寒し
考へてみるとテレビと新聞といふ伝統的なマス・メデイアを廃して久しく、一方で顔本もつぶやき人もやらないから今風のコミユニケーシヨンにも無縁の生活である。世間に背を向けて生きてゐると、要するにイノベーシヨンもITも何処吹く風でゐられる訳で、それで別段生き難くなることもない。世の中の流れや会社組織の主流から完全に身を引くことで、穏やかな生活を手に入れただけでなく、今まで見えてゐなかつた事も見えて來たやうにも思へ、所謂「人生を半分降り」た生き方に今のところ大いに満足してゐる。もつとも、遁世や厭世、世を捨て世間に背くといつた事の背後には、俗世に対する不満、憤懣、怒りや絶望があるのが常である。或いは自分を受け容れず、自分の才能を用ゐない世間や権力者へのルサンチマンが隠れてゐる筈である。余にもそれらが全くないとは言はないが、今のところかうした生き方の好いところばかりを感じてゐるといふのが、偽らざる実感である。

今日会社で戯れに自分の肩書きを考へてみた。

某香料会社 フレグランス研究所
小物調香グループ 処方作成係
専任副係長 管理職18級 組合員待遇

英文のタイトルは So-called Minor Perfumer とした。実際の肩書きよりも現実の仕事内容に即してゐるやうだ。

定時退社。夕食まで尺八練習。八時半から十時までジム。明日は健康診断である。