奇遇 

九月二十八日(金)晴後陰
朝の電車の中で『評傳正岡子規』を讀んでゐて明治二十五年に至り、昨日書いた鳴雪翁と猿蓑の話が出て來た。其の年子規は初めて根岸に移り住んだと云ふ。驛に着いて改札に歩むうち會社の者の姿を認め挨拶を交すと、其れが幕臣榎本武揚の子孫で今も根岸の辺りに住む人であつた。荷物が多いので出張かと聞くと、明日接待ゴルフだと言ふ。そして相手の客はZといふ會社だと言ふのである。其れは丁度最近余が使ひ始めたアパガードリナメルといふ齒磨粉を作つてゐる會社であつた。つまらない話ではあるが偶然が續いたので記す。