五重苦

三月七日(木)晴
気温は上がり空は晴れてゐるのに氣分は曇つた儘である。言ふまでもなく花粉症に五十肩、眩暈と蕁麻疹による體調の惡さから來るのだが、此れにあとひとつ何か加はれば、五十苦ならぬ五重苦となり、還暦まで此の調子が續くのではないかと悲観的になつたりする。病院にしても耳鼻科、整形外科、皮膚科、神経外科に跨る。風邪を引かなかつたのは幸ひだが、體調が惡すぎて風邪を引く暇もなかつたのかも知れぬ。胃腸の調子が良いのと腰痛が出てゐないのは有難い。少し前までは其の二つが何かと苦痛の種であつたが、全部一度には來ないやうで、さう考へれば五十肩も受け容れるべきなのかも知れぬ。此の齢になつて全き健康は幻想だらうから、何処かしら惡いことで平衡を保つてゐるのだらう。ただ、右肩の時よりも今囘の左肩の方が時間と伴に痛みが強くなつてゐるし、可動域も狭くなりつつあるので、近所の整形外科では心もとなく、來週大きな病院の五十肩の専門医に診てもらふことにした。テレビ等にもよく出て來る有名な先生らしい。今朝予約を入れたのだが、電話が繋がるまでは大変だつたものの思ひの他早くに予約が取れたのは幸ひであつた。家人の分と併せ今年は医療費十万円を超えて控除になりさうな勢ひである。
覚え書き、五十肩で何が出來ないか
腕が組めない。寝返りがうてない、と言ふより横向きに眠れない。左肩を下になど出來ないし、右が下でも痛む。ワイシャツの第一ボタンが留められない。腕を地面と平行に挙げることさへ出來ない。だから當然萬歳など絶対に無理。和服の帯を後ろ手で結べない。左手で重い扉は開けられない。左手で珈琲を飲むのも難しい。吊皮などもちろん握れない。ズボンを穿くとき左側も右手でやらないと激痛が走る。紙屑を塵箱に左手で投げ捨てることは不可能。一寸した捻りや腕の重さを肩で受け止めるやうな動作が無理なのである。髪の毛を洗ふのも右手のみ。手首を回すのも力が入る動作は痛む。利き腕でないから普段もしないが、ドライバーを囘すのも痛くて出來ないだらうと思ふ。辛うじて尺八は吹けるが一時間も吹くと疲れて痛くなる。