北風と太陽

四月十九日(金)
「北風と太陽」の話が嫌いである。そもそも競う内容がフェアでない。野球の選手とサッカーの選手が、百メートル走や漢字の書き取りで勝負をするというのなら分かる。だが遠投で優劣を決めるとすれば、野球選手の方が有利に決まっているではないか。旅人の外套を脱がせるというのも要するにそれと同じで、あらかじめ結果はわかっているのである。子どもの頃からこの話に出会う度にインチキ臭さを感じて嫌な気持ちになった。挿画の太陽の余裕ありげな笑顔も嫌味である。昔から捻くれていたのだろう、頬膨らませて一生懸命に吹きつける北風の方が応援したくなるのである。太陽というものに余り敬意を持っていないということもあるかも知れない。お天道様という言い方には太陽を含んだ宇宙の摂理や道理という感じがあるので嫌いではないが、お日さまというのはそれこそ脳天気な感じがして好きになれない。私は蟹座の生まれなので基本的に水や月の属性を持つからでもあるが、太陽崇拝というのも理解を絶する。太陽に対する私の感情は一言で言えば恐れでしかない。そうか、だから私には日本の皇室や皇祖神に対する崇敬の念があまりないのだ。アポッローンよりもアルテミスに惹かれる星の下なのであろう。