晝寝

八月六日(火)陰後雨
余は會社で晝休みには晝寝をするのが此処數年の習慣になつてゐる。晝食を食堂でとつた後一時まで、三十分から時に五十分近く眠る事もある。意外と眠れるもので夏は殊によく眠れる。非常階段のある、建物から扉を経て外に張り出した踊り場が余の寝床である。人も滅多に通らないし日蔭でもあり、何より七階で周囲に建物もないから風が通るので割に涼しいのである。其処に段ボールを畳んで平面にしたものを敷き、さらに梱包用のビニール製プチプチ資材を置いて仰向けに寝る。頭には家から持つて來た空氣枕を當て、目にハンカチでも載せれば準備完了である。コンクリートの上だから硬いには硬いが、一晩寝る訳ではないからそれ程痛くなることもない。いつホームレスになつてもやつてゆけさうである。
かうした晝寝が習慣になつてしまふと、出張などで出掛けた際は午後になつて眠くなつて困るといふ不都合はあるものの、普段は晝過ぎからだいぶ頭がすつきりするので止められないのである。もともと眠りが浅く夢ばかり見てゐて、小さなもの音にもすぐ目を覚ましてしまふ質であり、実は四六時中睡魔に襲はれてゐるやうな生活なのだが、晝寝のお蔭で晝過ぎには一番頭が働いて割に集中して仕事が出來るのは助かる。逆に言ふと、鼻の利く筈の午前中はぼおつとしてゐて余り仕事にならぬのも困りものではあるのだが。